東京民医連

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みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

2023年度春の全医師集会
3年ぶりに実参加形式で開催

 5月27日、2023年度東京民医連春の全医師集会は、3年ぶりの実参加形式で開催しました。現地参加79名、web参加23名。医師は初期研修医17名含む37名。歯科医師は初期研修医2名含む3名が参加しました。会場では久しぶりに対面する方も多く、旧交を温める場面も多くみられました。
 集会は、(1)個人の尊厳と公正な保健医療を求めて健康格差の克服に挑む。そのために誰一人取り残さない医療について学び、私たちが大切にすべき視点を得る、(2)県連長計、医師政策について共有するために、岡部敏彦東京民医連医師委員長からこれから策定する第6次医師政策の骨子の提案、(3)武田裕子順天堂大学医学部医学教育研究室教授による「健康格差を克服するSDH(健康の社会的決定要因)の教育実践」講演が行われました。
 また健生会から「多摩地域の血中PFAS濃度測定の取り組み」、健康文化会から「フードバンクと路上生活者支援の活動から考えること」、青年医師の会から「LGBTQアンケートについて」の報告がありました。初期研修や後期研修の修了報告もありました。
 集会の最後にこの春、入職した医師・歯科医師が紹介され、各々から東京民医連で医師としてスタートした感想やこんな医師に成長したいとの初期研修への期待が話されました。

 

岡部敏彦東京民医連医師委員長が
「第6次医師政策の骨子」を提案

 岡部医師は東京民医連第6次医師政策の提案をするにあたり、まず第5次までの医師政策が果たしてきた役割を振り返りました。医師政策の意義について、東京民医連の医師を取り巻く状況がわかる「地図」「教科書」、これからの活動方針が記載されている「羅針盤」、そして、県連全体の長期計画を支えるものと説明。これまでの到達点にたち、6次医師政策の骨子となるものとして以下を提案しました。(1)「多様性の尊重」(2)「いのちの平等と患者の立場にたった医療を地域医療の場で実践する」(3)「総合性と専門性のそれぞれを尊重」(4)「多職種協働の力を活かす」(5)「科学的視点と人権意識をつかんで離さない」の5項目です。
 そして作成にあたって、「若手にも伝わる」「民医連外の人にも伝わる」「まちづくりの視点を持つ」ことを心がけていくことが強調されました。

 

武田裕子順天堂大学医学部教授が
「SDHの教育実践」を学習講演

 武田教授からは、まず順天堂大学でのSDH教育実践について講演していただきました。SDHについて、いわゆる「親ガチャ」を例に、個人ではどうにもならない、自己責任を問えない「健康に影響を及ぼす社会的構造」と説明されました。SDHが大学医学部の医学教育モデルコアカリキュラム内で「医師としての基本的資質・能力」のひとつとして理解され、解決するために行動する力量を身につけることが要求されます。そして順天堂大学での具体的実践が紹介されました。
 健康格差の要因となる社会的文化的背景としてあげられる「言語特性」「社会経済的立場」に配慮した「やさしい日本語」の取り組みが紹介されました。
 外国人、高次機能障害、高齢者・認知症、知的障害者に対して、相手に合わせて、わかりやすく伝えることを医療機関で実践できるように研修会などを行っています。文書を短く、語尾を「です・ます」にする。尊敬語、謙譲語を使わず、丁寧語を使用する。外来語を多用しないなどが要点として述べられました。
 SDHを学ぶ視点としてもうひとつ、「SOGI」性的志向や性自認に関する取り組みが紹介されました。
 LGBTの方は日本人全体で7人に1人といわれる中、東京都や静岡県、石川県の病院の看護部長への調査で看取りの立ち合いは22・8%の機関で親族のみに限っており、パートナーが看取りに立ち会えなかった例が起きています。
 順天堂医院では、各部門でワーキンググループをつくり、講演や学習会を行い、「アライ=Ally、LGBTを理解し、支援する人」を300人誕生させ、受診しやすい病院にする取り組みをすすめているそうです。
 また順天堂大学医学教育研究室の基礎ゼミでは、「子ども食堂」「搾取労働させられる女子学生支援・Colabo」、路上生活者支援「TENOHASI」などに参加してSDHの学びを深めていることも補足されました。

 

参加者の感想

 今年入職した初期研修医の感想を紹介します。
 「以前から『親ガチャ』という言葉はSDHに反映されるような若者言葉だなと思っていました。親の収入で子の人生が変わってしまう事実に対して学生の時はどのように介入できるのかと考えていたが、医師となった今、民医連という組織の中で、できる限りの行動を実践していきたい」
 「わたしたちが当たり前だと思っていることができなかったり、周りの理解が得られなかったりする人々の存在に気づき、働きかける姿勢に感銘を受けました。自分の目の前の患者さんの生活にまで目を向けて解決しようとすることが、社会全体の仕組みを良くしていく一助になるという視点を持って今後の診療にあたりたいと考えました」