東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

人との関わりを忘れず、笑顔で


 私が訪問診療に携わり3年目となりました。訪問先ではいろいろな方と接することができ、看護の学びとなるだけでなく人生の勉強となっています。
 今冬、自分が訪問診療に携わり始めた時期に訪問診療に開始された方のことが心に残っています。肝細胞癌、肝硬変の89歳女性、独居。生活上では娘さん息子さんも健在で介護の協力も得られる環境でした。緩和病棟への入棟面談も済んでいました。整った身なり、片付いた部屋。体は辛くなっていくのに生活環境は変わらず整えられていました。毎回訪問に伺うと、定刻には四分の一ほど扉が開いており、「どうぞ」と言って迎え入れてくれました。「こんにちは」の挨拶とともに部屋へ上がると、苦しそうですが表情は明るく笑顔で、医師と看護師を受け入れてくれます。
 バイタルサインを測定し日常生活の状況を確認していき、終始笑顔で会話が弾んでいきます。ある日は書道の話、ある日は人形作りの話。時には庭に実ったトマトを一緒にもぎ取ったり…。訪問するたび、その方は必ず「人と話しをすることが一番いいよね。人とこうやって笑うことが一番大切よね」と話してくれました。
 3年目の冬は病が進行し、臨時往診に伺うと、顔面蒼白・呼吸促拍している状況でした。ご本人は「病院には行かない。家にいます」と訴えましたが、数時間後には救急搬送、病院で死亡確認されました。最後まで在宅で一人生きることを貫き通しました。
 「人と話すことは大切、笑顔って大事よね」という言葉が今も思い出されます。人との関わりを忘れず、笑顔で接する大切さを再確認させてくれました。
 在宅では人間同士の関わりが重要となります。その人の生活を尊重し、安心して生活できる手伝いをしていきたい。私たちが忘れがちである笑顔も大切にしていきたいと思っています。

(野田南部診療所・2024年4月号掲載)