機関誌「みんいれんTOKYO」2025年4月号

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機関誌「みんいれんTOKYO」2025年4月号

みなさんの入職を心から歓迎します

ケアが大切にされる社会を共に目指しましょう!

会長 根岸 京田

2025年度入職の皆さん、東京民医連にようこそ!全法人、全事業所、全職員、全共同組織をあげて心から歓迎いたします。

2020年に始まった新型コロナウイルス感染症は、終息こそしていないものの、その脅威は薄れつつあります。パンデミックの閉塞感が世界を覆っていた頃、私たちは「ケア」の重要性を改めて認識しました。人は一人では生きられず、誰かに支えられ、誰かを支えることで生きて(生かされて)います。ケアを大切にすることは、経済重視・効率重視の世の中にもう一つの評価軸を加えることだと考えます。

しかし、世界を見渡すと、「ケアが大切にされる社会」とは程遠い現実があります。コロナの脅威が薄れて経済優先の新自由主義が再び勃興しています。特にアメリカのトランプ大統領の再登場は、多くの人々に強い危機感を抱かせています。彼の掲げる「偉大なアメリカ」は、経済力と軍事力を基盤とし、強者が弱者を支配し、富が力を持つ社会を意味します。戦争さえもビジネスとして捉える姿勢には賛同できません。

私たちは、医療介護に携わる者として、経済一辺倒の社会にケアの重要性を訴え続ける責務があります。ケアの負担を誰かに押し付けるのではなく、話し合いをもとに社会全体で分かち合い支え合うことは民主主義の根幹です。人が人を気遣い、「お互いさま」「おかげさま」と言える社会、そんなケアが大切にされる社会を共に目指しましょう!

決して焦らず着実に 毎日の歩みを大切に

副会長 島野 清

 新しく民医連薬剤師として入職された皆さんに心から歓迎をいたします。
 薬剤師法第一条には薬剤師は「調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」と記されています。薬剤師は「モノ(医薬品)」と「ヒト(患者)」の両方に関わり、どちらもおろそかにしては成り立たない職種です。その医薬品は生理活性物質である側面と商品の性質を合わせもっています。
 近年の薬物治療の進歩は目覚ましいものがありますが、それに伴い高額な医薬品も増えています。昨年10月からの選定療養費制度による保険外の薬代の一部負担が実施されたほか、今年になって高額療養費制度の上限額引き上げや、ある政党による「一部の医療用医薬品を保険適用から除外すべきだ」など、医薬品をめぐるできごとがたくさん起こっています。いずれも「持続的な社会保障のため」といいながら、結果的には患者負担を増やすことにつながり国民、患者の不安感が増しています。現在も後発医薬品などの流通が不安定な状況におかれています。30年以上前から使われている抗生物質や咳止めなど安くてよいくすりが依然として不足しています。
 そのような状況のもとでも薬剤師は患者に寄り添い、丁寧に説明し理解を得ることを通じて、安心感を与えることができる存在であり続けたいと思います。
 新人の皆さんは長かった学生生活を終えて社会人として1年目の薬剤師として歩むことになります。初めての職場で不安なこともあるかもしれませんが、決して焦らず、しかし着実に毎日の歩みを大切にしながら活躍されることを期待します。

人に寄り添う看護師へ

副会長 高野 好枝

東京民医連の事業所に入職された看護職員の皆様、入職おめでとうございます。
多くの医療機関の中で、民医連を選ばれたことに、心から敬意を表します。

さて、今年は2025年。「2025年問題」と言われる超高齢化社会に突入しました。この先も、さらに少子高齢化が進み、働き手の減少が加速していくと言われています。

この社会構造の変化は、病気や障害を持つ方の人生や生活に大きく影響します。医療介護サービスの受け手と担い手のバランスが崩れ、医療や介護が必要な方が、適切なサービスを受けられないかもしれないということです。それは、病気で辛くても、生活で困っていても我慢するということです。社会的、経済的に弱い立場にある方は、より一層そのような状況になるかもしれません。

このような時代だからこそ、どのような背景の方にも寄り添い、手を差し伸べることの出来る看護師の存在が必要です。

これから皆様は、様々な困難を抱えた方と出会います。一つ一つの出会いと経験が、寄り添い、人を大切にできる看護師へと成長させてくれます。大いに期待してください。皆様の成長を看護部全体で応援しています。

涙も笑顔も分かち合える、東京民医連で共に成長

医学生委員長 伊藤 洪志

 新入職員の皆さん、東京民医連へのご入職、誠におめでとうございます!
 高齢化、格差拡大、孤立を背景に、コロナ禍を経て、ケア労働は社会に不可欠なものと再認識されました。皆さんは、それぞれの分野で人々の生活を支える重要な役割を担おうと張り切っていることでしょう。しかし、社会保障費削減、企業の利益優先、軍拡が進む社会では、ケア労働は軽視されがちという困難もあります。
 そのような中、ケアの現場では時に感情が大きく揺さぶられる場面に遭遇します。「あなたのせいで母は悪くなった」と怒る利用者家族、「もう放っておいてください」と繰り返すセルフネグレクト高齢者、「まだ死にたくない」と涙する末期がん患者。私たちの心は常に揺れ動いています。
 私たち自身もまた、脆弱性を抱え、他者に依存し、ケアを必要とする存在なのです。だからこそ大切なのは、感情を押し殺すのではなく、自身の心の動きを受け入れ、向き合いながらも、専門職としての責任を果たすことです。悩みは一人で抱え込まず、同僚や先輩と分かち合い、苦悩と負担を軽減し、より良いケアにつなげましょう。
 東京民医連は、創立以来、地域の方々の悩みに耳を傾け、共に歩んできました。皆さんが、ケアの本質を深く理解し、感情への向き合い方を身につけ、実践の中で活かして、患者・利用者さん、そして社会全体に貢献できるようになることを信じています。涙も笑顔も共にし、より良い未来を築いていきましょう。


輝け看護!

どんな人生を送りたいか 共に悩み実現した家族支援

 東葛病院で入退院支援課に所属している退院支援看護師です。
 脳梗塞を発症後、経口摂取が出来なくなり、ACPを含めた退院支援に介入した症例を紹介します。
 80歳代男性、妻と2人暮らし。長女は50代で逝去。嚥下評価にて経口摂取は望めず、経管栄養のため抑制。その姿を見て何が本人にとって良いか、と方針決定に思い悩む妻に寄り添いました。最終的には苦痛のないよう経鼻栄養を外し、皮下点滴での看取りを決断されました。
 一時は在宅退院も考えましたが、妻の介護負担を考慮して断念した経緯があります。自宅への外出を提案しましたが、外出前日から血圧が低く判断に迷いました。それでも妻の決意は固いものがありました。
 自宅が近づくと「お父さんの散歩コースだよ」の妻の声かけに夫は静かに頷きました。「家の匂い分かる?いつも見ていたTVよ」には口元が緩みました。毎日飲んでいた栄養ドリンクを渡すと脚を組み、飲む仕草を見せました。蓋を開けてと身振りをしたので、ティッシュを湿らせて口元を拭うと、「お父さん、おいしい?」の言葉に頷きました。
 居間には長女の写真があり、「〇〇ちゃんが待ってたって」と語りかける妻の姿がありました。病院で見ることなかったA氏本来の姿を垣間見て、心温まる時間を共有できました。
 退院支援看護師は、入院を機に意思決定を求める場面に立ち会うことも多く、支援者の私自身が判断に迷うことがあります。
 本人がどう生きてきたか、どう生きたいかを汲み、家族の揺れる思いに寄り添った外出支援でした。帰りの車内で「心残りはないです」と言った妻の様子に、改めて家族が選択で後悔しないよう、寄り添った支援を続けたい、と思いました。
(東葛病院・2025年4月号掲載)

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