機関誌「みんいれんTOKYO」2025年11月号
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機関誌「みんいれんTOKYO」2025年11月号
共同組織拡大強化月間
序盤で成果と課題が鮮明に
~「厳しい時だからこそ 共同組織とともに」と呼びかけ~
東京民医連共同組織委員会は、2025年度共同組織拡大強化月間(9月18日スタート)の序盤の取り組みを振り返り、今後の強化点を示す文書を理事会に提出しました。
医療・介護崩壊の危機に直面する中、「仲間を増やし、2つの署名で地域に打ってでよう!」をスローガンに掲げ、厳しい情勢下での運動強化を呼びかけています。
序盤の到達点仲間増やしは前年を大幅に上回る
「月間」は9月18日にスタートし、10月15日までの到達は1,114人の仲間増やしとなり、昨年度の同時期(555人)を大きく上回る好調な出だしとなりました。特に、友の会の倍加をめざす健生会・三多摩健康友の会が全体を牽引しており、他の法人・共同組織も奮闘しています。貧困や格差、社会的孤立が地域の中で広がり、様々な問題が起こっています。孤立する住民に寄り添う共同組織の活動を強化することが求められています。
医療・介護崩壊ストップ署名の到達は、目標8万筆に対し、10月17日現在で12,820筆に留まっています(目標比16.3%)。全国目標100万筆を目指す今回の署名活動には、従来の延長線上にない規模とテンポが求められており、広範な地域住民、患者への呼びかけが今後の強化点とされています。
月間目標の再確認と運動の二本柱
東京民医連は、来年の全国共同組織活動交流集会を会員数を減らさずに迎えられるよう、年間1万人、月間中に8,000人の仲間増やしを目標に掲げています。また、すべての共同組織での「多世代構成」への挑戦や、民医連の原点がわかる「いつでも元気」の拡大、そして医療・介護崩壊ストップ署名の目標達成が柱です。
今後の取り組みの強化点として、以下の2つを活動の柱に据え、全職員での実践を求めています。
仲間増やし
月間中に8,000人を目標とし、「来年の共同組織活動交流集会(9/27)を増勢で迎える」ことを目指します。窓口での入会チラシ配布の徹底や、職員入会比率を高めることも課題です。
地域医療・介護を守る
医療崩壊ストップ緊急署名8万筆、新介護署名2.2万筆を達成し、国や自治体へ働きかけます。他の医療機関や介護事業所との連携・協力の拡大も重視しています。
各法人・共同組織の取り組みの特徴
健生会
三多摩健康友の会の倍加(2.5万人⇒5万人)をめざし、会費を入会金制度(一世帯500円)に改めた最初の月間です。9月からの期間で933名が入会し、前進しています。
東京勤医会
推進組織をつくり医療崩壊ストップ署名に尽力し、すでに6,000筆を超え県連全体を牽引しています。
東都協議会
三郷地域では活動交流集会を開催し、友の会の拡大で病院の経営改善とまちづくりを進めることを意思統一。全職場持ち回りの玄関前宣伝や郵送作戦、訪問行動などを展開しています。
東京保健生協
研修会で、「担い手づくり」を学び、多彩な活動(保健講座、フードバンクなど)で仲間増やしにつなげています。
劇変の情勢を打開する共同の力
自民・維新の連立政権が成立しました。両党の連立合意書には、社会保障の切り捨て(高齢者3割負担、OTC類似薬の保険外し、公的保険と民間保険の融合など)、憲法9条改悪、敵基地攻撃能力の保有、スパイ防止法の検討など、「解党的出直し」を図るはずだった自民党政権がより強権化した姿となって戻ってきました。
このような厳しい情勢に対し、共同組織の仲間を増やして地域で運動を広げることが情勢を打開する力になります。
運動を進める上では、「あらゆる活動を共同組織とともに」という視点が大切です。 厳しい経営状況ですが、「経営改善」と「共同組織の強化」は密接な関係にあります。
全職員が地域を知り、患者・利用者に共同組織への加入を訴える姿勢を貫き、すべての法人で目標達成させるために奮闘することを呼びかけます。
第4回 デマと印象操作と憎悪扇動に頼る政治
いま伝えたいこと
つくろい東京ファンド
小林美穂子
この記事が掲載されるころには新総理が誕生しているだろうか。情勢を見る限り、明るい展望は見込めそうにない。
先の参議院選挙で排外主義を全面的に押し出し、根拠のないデマで外国人差別を煽りまくった参政党は、現政権への不満が生んだ産物と言われている。物価高や格差などによる不安や不満を募らせる人々から熱狂的に支持された。私もそれまで近しくしていた人たちが突然「差別じゃなくて区別」と言い出し、参政党が世の中を変えてくれると期待していることに衝撃を受けた。
参院選で大きく議席を失った石破茂首相は、その責任を問われて辞職するに至るが、生活困窮者支援に身を置く者としては、名乗り上げた総裁候補たちがなかなかキツかった。そもそも自民党が議席を減らした理由が、旧統一教会との深い関係や、裏金などの長年にわたる腐敗なのだから、その自民党の面々が並んだ総裁選を見て期待などできるか。子どもの頃に流行った「究極の選択」を迫られている気にしかならない。
小泉進次郎と一騎打ちを勝ち抜いて総裁となった高市早苗氏は、2012年5月に都内で開かれた研修会で「さもしい顔をして貰えるものは貰おうとか、少しでも弱者のふりをして得をしよう、そんな国民ばかりになったら日本国は滅びてしまう」と発言した人物だ。総裁選を闘った林芳正氏も同年9月、「(生活保護制度を)悪用して、自分のポケットに入れているような人が出てきた。はた迷惑な人ですね」と街頭で演説していた過去を持つ。
悪質な印象操作でバッシング
実際は生活保護の不正受給は総額のたった0.3%程度と言われている。件数にすると利用者総数の1%~2%。そのうちの多くは制度の理解不足による「稼働収入の申告漏れ」や故意ではない「過小申告」であり、悪質と認められたものは少ない。
勿論、(特に悪質な)不正受給を厳しく取り締まることに異論はない。しかし、上記政治家たちの発言が極めて悪質なのは、これほどまでに少ない不正受給をあたかも生活保護利用者全体の問題であるかのように国民に印象付けたことである。
なぜ、一部自民党議員たちはメディアを駆使し、印象操作をしてまで生活保護バッシングの嵐を巻き起こしたのかと言えば、2012年3月に発足した自民党の生活保護に関するプロジェクトチーム(PT)が関係していると思わずにはいられない。
誰のための国、法律、政治⁉
世耕弘成氏が座長を務めたこのPTには、三原じゅん子氏や小泉進次郎氏も名を連ねている。座長の世耕氏は「(生活保護利用者は)フルスペックの人権を制限してもよい」と、ものすごい発言をしているのだが、このPTは生活保護費削減を打ち出し、その年の暮れの衆院選で自民党公約に保護費の1割削減を掲げ、民主党から政権を奪還する。バッシング扇動から政権奪還まで、実に見事な悪知恵とチームプレイではないか。
その翌年、公約通りに生活保護費が削減された。しかし、憲法で保障された最低生活費の削減は違法として、1000人を超える利用者が全国29カ所で裁判を起こし、最初の裁判から数えて実に11年もの闘いの末、今年6月、ついに最高裁判所において原告が勝利した。
生活保護の引き下げは、自民党の公約を実現させるために厚労省が苦心(くしん)惨憺(さんたん)、データを恣意的に抽出して無理やり辻褄合わせをしたもので、生活保護基準の在り方を検討してきた社会保障審議会生活保護基準部会にも知らせずに強行した根拠のないものだった。
最高裁判決での勝訴判決は司法がかろうじて機能している証となり、生活保護の原告たちが国を相手に勝訴した歴史的な判決となった。
ところが驚くなかれ。この判決が出てから既に3か月以上が経った今も、厚労省は原告や利用者に謝罪しないどころか、最高裁判決の対応を検討するために、生活保護基準に明るい専門家がほとんどいない専門委員会を立ち上げ、どう考えても時間稼ぎか、保護費の差額補償をしないため(あるいは最小限にするための)としか思えない不毛な議論を重ねている。国とは、法律とは、政治とはなんだろう、一体誰のためにあるのか。
さもしいのはどっちだ
自民党総裁選の候補者を振り返ろう。茂木敏充氏は、物価高に喘ぐ国民の人気を得ようと、メディア御用達の八百屋に黒塗りの高級車を横付けして野菜を物色、お代は秘書に払わせて批判の的になった。懲りずに子ども食堂を訪ね、ホクホク喜びながらバースデーケーキを食べるという、眩暈がするほどに無神経な姿が報道されてまた集中砲火を浴びた。
また、小泉進次郎氏の陣営関係者はニコニコ動画で「小泉氏を称賛するコメント」を投稿するよう依頼し、赤面するような例示をいくつも示していたことがバレ、赤っ恥をかいた。
極悪なのは高市早苗氏で、外国人観光客が奈良のシカに暴行をしているなどと主張し、加熱していた排外主義に油を注いだ。SNS上は外国人に対するデマが溢れ返り、憎悪が爆発した。
2012年に生活保護バッシングを煽った高市早苗氏は、このたびの総裁選ではデマを根拠とした外国人差別に乗っかった。この人は憎悪を煽ること以外に何ができるのだろう。旧統一教会との関係も、政治と金の問題も清算する気はない。それも明快になった。
現在、公明党が連立与党を離れ、首班指名選挙をめぐって攻防が続いているが、今、候補に挙がる誰が新総理になっても、国籍を問わない生活困窮者支援をする私たちにとっては、氷河期みたいな厳しい時代がやってくることが予想されてグッタリしている。
輝け看護
小さな変化に気づく力
Sさんは、 80代でお一人暮らし。介護保険未申請です。月に1回の定期受診の際には、いつも4輪カートを押して元気に来院され、診察室では大きな声で明るく話されていました。
ところが、ある予約日の朝、「体調が悪いので受診をキャンセルしたい」と電話が入りました。事務職員が「いつもに比べて呂律が回っていない」と気がつき、看護師に電話対応を変わりました。会話は呂律不良で、歩行は可能だが体に力が入らず、口も閉まりにくいなど、普段と違う様子でした。医師に相談して看護師が自宅を訪問することになりました。
到着するとSさんが玄関先に座り込んでいました。言葉はいつもより出にくく、昨夜は大量に嘔吐して、吐き気が持続しているとのこと。その場で神奈川に住んでいる長男に連絡をとりました。一刻も早く精査が必要と判断して、救急搬送しました。
後日、ご家族より「腸管破裂による敗血症で亡くなりました。結果は残念でしたが、早く気づいて対応してもらったので、孤独死にならずに病院へつないでもらえました。本当にありがとうございました」と感謝の言葉をいただきました。普段の元気な姿を知っていたからこそ、その変化に気付くことができた事例です。
今回の経験から改めて感じたのは、患者さん一人ひとりの言葉に耳を傾け、普段の生活や表情を知っておくことの大切さです。その積み重ねが、ちょっとした異変を見逃さず、対応につながります。そして何より、患者さんやご家族の安心につながるのだと実感しました。
私たちは、地域の皆さまにとって最も身近な医療機関として、どんな小さなことでも気軽に相談できる存在でありたいと思っています。
これからも「安心して暮らせる地域」を支える診療所であり続けられるよう、日々の関わりを大切にしていきたいと思います。
(西荻窪診療所 岩下 智子)