機関誌「みんいれんTOKYO」2026年2月号

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機関誌「みんいれんTOKYO」2026年2月号

2027年度からの新たな地域医療構想を見据えて

「骨太の方針2025」による供給縮小への警鐘
医療・介護の提供体制を守るために

佛教大学社会福祉学部 長友(ながとも) (まさ)(てる

1. 東京都地域医療構想から

地域医療構想は公的医療費抑制を目的とした行政計画である。2025年のあるべき医療供給体制を描くものとして、2016年に各都道府県にて策定された。

現行の地域医療構想は医療需要をふまえた必要病床数を定めた上で、病床機能報告、地域医療構想調整会議における協議、地域医療介護総合確保基金の活用、都道府県知事の権限等を通じて病床の機能分化・連携の取り組みが進められてきたところである。

2016年7月に策定された東京都地域医療構想においては、13の二次保健医療圏を地域医療構想の構想区域とし、区域ごとに地域医療構想調整会議を重ね、病床機能の分化や地域で必要な医療機能等について議論されてきた。

近年では、コロナ禍で明らかとなった高齢患者の救急対応や地域医療連携が課題として検討されている。なかでも、医療・介護提供体制については看護師不足によって病床を休床せざるを得ない実態や、ケアマネジャーの人員不足と高齢化、訪問介護ヘルパーが確保できないなど、既存の医療・介護提供体制を維持するための人員確保が厳しい状態であることが指摘されている。

2. 人権保障の担い手の水準を大幅に引き上げる

人口減少が顕著な地方においては、医療・介護の専門職確保は以前から課題となっているが、人口過密状態にある地域を抱える東京都においても、医療・介護の人員不足が常態化している。各地で通底する人員不足の課題は、国レベルでの大幅な政策転換が必要であることの証左でもある。

周知の通り、他産業との比較でも、医療や介護、社会福祉等の仕事は低賃金の状態に置かれており、人員不足等の課題対策として賃金水準の全体的な底上げ、人員配置基準の引き上げ等の対応が急務である。

そのうえ、人権保障の担い手である医療・介護等の労働者の賃金水準を全体的に大幅に底上げすることによって、患者・利用者の人権保障水準が引き上がることにつながる。医療・介護労働者の賃金水準と患者・地域住民の人権保障水準は連動している。

日本医療労働組合連合会(日本医労連)はケア労働者の処遇改善として、診療報酬・介護報酬いずれも、少なくとも10%以上の引き上げを求めてきた。人権保障水準を引き上げる意味でも当然の要求である。

実際には、2026年度の診療報酬改定率は3.10%と低位の上げ幅となった。大幅な改善には程遠い引き上げ率であり、診療報酬以外の国庫負担によるケア労働者への保障が必要である。

次の新たな地域医療構想では、人員確保が困難という医療・介護提供体制の改善を実現しなければならない。

3. 医療提供体制縮小の動き

ところが、人員確保が困難という課題に対して、医療・介護提供体制の縮小を図ることで対応する政策動向が見られる。

新たな地域医療構想は2027年度から順次開始し、2040年の供給体制に向けた計画として立案される予定である。新たな地域医療構想では、入院の病床に限らず、外来・在宅、介護との連携、人材確保等も含めたあるべき医療提供体制の実現に資するよう策定・推進(将来のビジョン等、病床だけでなく医療機関機能に着目した機能分化・連携等)とされている。

この新たな地域医療構想を開始するまでに11万床を削減し、医療費1兆円の削減を目指すとして、2025年6月11日に自民・公明・維新の3党が合意した。この合意を受けて同年6月13日に閣議決定した「骨太の方針2025」には「新たな地域医療構想に向けた病床削減」(「骨太の方針2025」P.39)との文言が示されている。

注釈には「人口減少等により不要となると推定される一般病床・療養病床・精神病床といった病床について、地域の実情を踏まえた調査を行った上で、2年後の新たな地域医療構想に向けて、不可逆的な措置を講じつつ、調査をふまえて次の地域医療構想までに削減を図る」と記載されている。

「骨太の方針2025」において明記している通り、2027年度から順次スタートする新たな地域医療構想までに、大幅な病床削減を企図した財源措置等がすでに講じられてきた。

具体的には、医療施設等経営強化緊急支援事業(いわゆる「緊急支援パッケージ」)による病床削減がある。「緊急支援パッケージ」のうち、病床数適正化支援事業では、削減した病床1床につき、410万4000円の財政的支援を受けることができる。昨年6月までに合計1万1274床の病床廃止に予算がついた。

4. 供給が需要を決定する

医師や看護師、検査技師等の医療労働者等を確保できず休床となっている医療機関は全国各地にある。政府の公的医療費抑制策のミスリードによるところである。

人材確保できずに休床となっているような医療機関をはじめ、病床を削減すると1床あたり410万円が支給されるような、財政的なインセンティブを示すことによって、今後も過剰な病床削減が行われることになる。医療機関の経営面のみの判断となることも留意しなければならない。地域の医療保障、介護保障という観点からの慎重な判断が必要とされる。

医療や介護は供給が需要を決定するため、住民にとってアクセスしやすい病院や診療所、介護事業所があることが重要となる。医療でいえば、身近に医療機関がなければ、需要は潜在化し、そして何より重症化する。軽症段階でいかに医療にアクセスしやすくするかがポイントとなる。

人材確保が課題であり、地方では介護事業所が1ヶ所もない自治体数も増加傾向にある。いずれも「保険あって給付なし」「保険あってサービスなし」という状況が拡大している。公的医療保険や公的介護保険による医療保障、介護保障の充実に向けて、拠点の集約、再編統合ではなく拠点の計画的整備を行う必要がある。

新たな地域医療構想策定に向けたガイドラインは今年度中に発出され、2026年度には東京都が策定に向けた検討を開始する。引き続き注視したい。

長友 薫輝さんのプロフィール

長友 薫輝(なかとも まきてる)

  • 専攻は社会保障論、医療・福祉政策論、地域医療論、地域福祉論。
  • 佛教大学社会福祉学部准教授。
  • 公益財団法人日本医療総合研究所副理事長、自治体問題研究所理事、総合社会福祉研究所理事、日本高齢期運動サポートセンター理事、日本医療福祉政策学会幹事などを務めている。
  • 近著には『全世代型社会保障改革とは何か―国民健康保険と医療政策のゆくえ』(自治体研究社、2025年)などがある。
  • 三重県国民健康保険運営協議会副委員長、三重県ひきこもり支援推進協議会会長、三重県地域福祉推進会議委員、三重県障がい者自立支援協議会会長、三重県障がい者差別解消支援協議会会長、三重県地域包括ケアシステムアドバイザー、松阪市地域包括ケア推進会議会長、亀山市地域福祉推進委員会委員長、大阪府忠岡町行政アドバイザーなど。
  • 近著には『全世代型社会保障改革とは何か―国民健康保険と医療政策のゆくえ』(自治体研究社、2025年)などがある。

いま 伝えたいこと

つくろい東京ファンド 小林 美穂子

第6回 共に生きるということ

いささか時機を逸してしまったが、年末年始について書かせてほしい。

年の瀬の頃になると、町にクリスマスソングが流れ、イルミネーションが瞬く。人々は時間に追われて足早になり、スーパーやデパートは買い物客で溢れる。故郷への帰省、家族旅行、クリスマスプレゼントに豪華なおせち、コタツを囲んだ家族団らん・・・。それらは、つくろい東京ファンドの利用者さんにとっては、どれも無縁のものばかり。

家族や親せきとは遠い昔に縁が切れている場合がほとんどだし、そもそも家族がいない人もいる。危険から逃れてきている難民・移民たちの孤独はもっと深刻だ。せめて美味しいものでも食べたいと思っても、先立つものはない。物価高騰はとどまることを知らず、節約、節約の毎日はささやかな貯金すら許さないほどに厳しい。

クリスマスやお正月の華やかでめでたいムードは、ないない尽くしの彼らの境遇を残酷なほどに際立たせる。

一緒に作り、一緒に楽しむ

こんな時こそ、みんなで集まってワイワイ過ごすのだと、つくろい東京ファンドでは毎年クリスマス会と、「年越しソバ会」を実施している。

去年のクリスマス会は12月23日、地域の障害者福祉会館の調理室を借りて行われた。ここ数年はイスラム教徒の相談者や利用者さんも多くなった。宗教上の理由があっても全員が等しく食べられるよう、ハラルの店で食材を買いこんで、利用者とボランティアが一緒になって調理をする。

多様な国籍の0歳~70代、合計40名がクリームシチュー、パスタを作り、ガーナの方がチキンのトマト煮込みを作る。調理リーダーを自認する利用者が、苦労して刻んだ大量のニンニクを、誤って盛大にぶちまけるアクシデントはご愛嬌、その都度みんなで協力し合って作業が進められた。ご寄付いただいた果物が並べられ、地域のボランティアの方が人数分のケーキを差し入れてくれた時には歓声が上がった。

普段は生活相談スタッフとして働く村田結さんのもう一つの顔はアーティスト。彼女がギターでクリスマスソングを歌うと、賑やかな会場が静まり返った。小さなアフリカの子どもが興味津々で歌う村田さんのそばにやって来て、ピョンピョン跳ねる。——と、見てきたようなことを書いているが、実は私は腰痛で休んでおり、同僚が送ってくれた動画を見て「クーッ、楽しそうだなぁー!!」と家で羨ましがっていたのだった。

チームワークだ、わっしょい!

そして迎えた大晦日。つくろい東京ファンドの一年の締めくくりは「年越しソバ会」と相場が決まっている。例年、スタッフの大澤優真さんが実家の味「田舎ソバ」を作るのだが、外国人支援に忙殺される彼の代わりに今年は私が作ることになっていた。

作るのは50人分のつまみとソバ。大晦日午前10時、ご縁があって毎年駆け付けてくれる映画監督の前田亜紀さんとライターの和田靜香さんが「カフェ潮の路」にやってきた。

「前田さん、アボカド剥いてワカモーレ作って。レシピは適当にネットで見て」「え?なんですか、それ」と目を白黒させながらもレシピを検索して取り掛かる前田さん。かつてコンビニアルバイトで培った揚げ物スキルを如何なく発揮する和田さん。

カフェで準備したワカモーレ、ひよこ豆のフムス、鶏から揚げ、サツマイモの素揚げ、ビーツのサラダ、白菜と干しエビの中華煮、ジャガイモの中華冷菜、筑前煮、ゆず大根、ドイツから届いたシュトーレンを会場となる事務所に運ぶと、あたふたと今度はソバつゆ作りに取り掛かる。事務所には、やはり毎年大晦日に駆け付けてくれる友人たちが待ち構えており、ネギを切り、キノコを小房に分け、完成品を盛り付け・・・と、狭い事務所で働きアリのようにお互いを巧妙に避けながら作業をする。

一方、廊下では多国籍の皆さんが、色とりどりの折り紙をドアや壁に貼り付けて行った。夥しい数の折り紙は、二年前に亡くなった高齢女性が、見えない目でせっせと折り貯めたものだ。彼女の作品で廊下を鮮やかに飾るのが恒例となっている。

人種のるつぼと化した事務所の大晦日

夕方になると次々にやってくる顔、顔、顔。開けられる部屋のすべてを開放して、大賑わいでソバ会は始まる。私は頭にタオル巻いてひたすらソバを茹で続ける立喰いソバ屋のおばちゃんと化す。「おかわりー!」の声が上がる。

生後4か月の赤ちゃんが母親に抱かれてやってきた。紛争地帯から逃れてきた母親から引き継がれた命。大澤さんが慣れない手つきで抱くと、生まれたての命は嫌がるわけでも、かといって笑うわけでもなく、ただ、清らかすぎてたじろいでしまうような黒い瞳で大澤さんを凝視していた。不思議なものでも見るように。その様子を見て、みんなが笑う。これ以上なく平和な時間。

一年の挨拶を交わせる喜び

9時頃になると一人また一人と年末の挨拶をして帰っていく。この活動を始めてつくづく感じるのは、「今年もお世話になりました。来年もよろしく」「良いお年を」と言葉を交わせる相手がいることの大切さだ。

大澤さんと村田さんは廊下に出て、あるいは階下まで見送って、頭を下げ、手を振っていた。片付けが終わると、今度は配達だ。体調が悪い人、足が不自由で会場に来られない人たちにお蕎麦やみかんを届けるため、私たちは自転車で夜道に散って行く。

こうして私たちの2025年は慌ただしく幕を閉じた。また一年、みんなが生き抜けるようにと祈りつつ。


輝け看護!

やさしさの贈り合い

時間に追われながら、あっという間に一日を終えている日々。ある患者さんから、とても素敵なものをもらったので振り返ってみようと思います。

Aさんはいつもベッドに端坐位となり、スポーツ中継を観ている方でした。私が伺うと「一緒に観て行けよ」「今日は気持ちよく勝ったね」など楽しく話されていました。そしてひと通り話され、観察が済むと、しっかりと握手して訪室が終了するようになりました。

ある時、他のスタッフからAさんが呼んでいると聞き、数日ぶりに伺いました。「いやぁこの前は2時間も待たせて悪かったな。これ食べてくれ!」と言われました。もちろん2時間も待ったことはありません。

Aさんは申し訳なそうに、自分のカバンから白い袋を手渡してくれました。中身はなんと電気シェーバー。それを焼き芋と言って渡してくれたのです。

一瞬ぽかんとしましたが、これはきっとAさんのやさしさだと受け取りました。そして病棟のスタッフと共有し、今では楽しい思い出になりました。

なぜシェーバーを焼き芋と思ったのか。私にくれたのか。「2時間待たせた」とは何だったのか。ご本人から聞くことはできませんが、ここから学んだことは「やさしさを提供するとやさしさで返ってくる」ということ。

看護における「やさしさ」とは、特別なことをするのではなく、日々の何気ない関わりの中にあるもので、相手を一人の人間として大切に思い、尊重し、安心できる時間を提供することだと感じました。

言葉を交わしたり、手を握ったりという何気ない関わりの積み重ねが、その人の心に届く看護につながっていくのかもしれません。

今回の出来事のように、「やさしさ」で返してもらえるような「やさしさ」を提供したいと思います。

(王子生協病院 長 信幸)

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