機関誌「みんいれんTOKYO」2026年8月号

News
  1. ホーム
  2. 機関誌「みんいれんTOKYO」一覧
  3. 機関誌「みんいれんTOKYO」2026年8月号

機関誌「みんいれんTOKYO」2026年8月号

これからの平和運動と核軍縮の展望

ピースボート共同代表 畠山 澄子

世界があまりにも平和ではない。その事実を、私たちは日々突きつけられている。
ロシアによる全面侵攻から続くウクライナの戦争に、終結の兆しは見えない。
ハマスによる攻撃への報復として始まり、ジェノサイドと厳しく批判されるイスラエルのガザ攻撃も収まらないまま、今年の2月には米国とイスラエルがイランを攻撃し、中東全体の不安定化に拍車をかけた。
事態がどこへ向かうのか、予測すら難しい。

深まる核への依存と現実の壁

核をめぐる状況は、さらに深刻だ。
核保有国が核兵器を後ろ盾として武力を行使し、核による威嚇を繰り返すなか、本来であれば核の危険性こそが再認識されるべきではなかろうか。
ところが現実には、多くの国が核兵器の必要性を再確認する方向へと動く。
フランスは核抑止の強化を打ち出し、ヨーロッパでは核兵器を安全保障の中心に据える議論が広がっている。4月から5月にかけて参加した核不拡散条約(NPT)再検討会議が、3回連続で最終文書を採択できずに終わったことにも、もはや驚きはなかった。

日本も例外ではない。反核非核を求める世論は根強いものの、政治の場では非核三原則の見直しや核共有を含む議論を求める声が目立つようになった。被爆国である日本においてさえ、核兵器をなくす道ではなく、核抑止への依存を深める道が「現実的な選択肢」として語られ始めている。

たしかに、ニュースだけを追っていると、鬱々とした気持ちにもなる。あまりの不条理に怒りが込み上げ、むなしさを覚えることも少なくない。
しかし、それでも私は、核軍縮の未来に希望を持っている。

それは「きっと世界は良くなる」という楽観ではない。世界各地で出会ってきた人々の姿を見てきたからこその希望だ。国家間の対立は深まっていても、人と人との関係までが壊れているわけではない。
むしろ世界各地の現場で、困難な状況に置かれながらも国境を越えて手を取り合おうとする人々に、私はこれまで何度も励まされてきた。

市民の粘り強い歩みが歴史を動かした

実は今、この原稿を船の上で書いている。
3週間かけて日本一周をし、韓国・釜山、台湾・基隆にも寄港するクルーズの最中だ。
最初の寄港地は広島だった。現地で平和運動に取り組む方々を船に招き、フォーラムを開いた。そこで18年前、「ヒバクシャ地球一周~証言の航海~」(おりづるプロジェクト)[注1]をご一緒した被爆者や関係者の方々と久しぶりに再会した。
2008年当時を思い返すと、核兵器禁止条約が実現すると信じていた人は、ごく少数だったはずだ。
それでも私たちは、被爆者の証言を世界へ届け、各地の市民や核実験被害者、戦争被害者と出会い、人道的な視点から核兵器を問い直す輪を広げてきた。その積み重ねが、2017年の核兵器禁止条約の採択につながった。条約はその後発効し、今年11月末には、初めての再検討会議が開かれる。

「核軍縮は核保有国が動かなければ進まない」という言葉を耳にすることは多い。
もちろん国家の役割は大きい。しかし一方で、核兵器禁止条約という歴史的な前進は、市民社会が被爆者とともに粘り強く積み重ねてきた努力なしには実現しなかった。
18年前には想像できなかった未来を、私たちは自分たちの手で切り開いてきたのである。

日本では、核兵器について「議論すべきだ」とされる理由の一つに東アジア情勢がある。確かに国家間の関係だけを見れば、決して楽観できる状況ではない。
しかし、私が一年の約三分の一を過ごすピースボートの船では、日本、中国、韓国、台湾をはじめとする各地から参加者が集まり、三か月半をともに暮らす。育った環境も、受けてきた教育も、政治的な考え方も異なる。
それでも同じ船で寝食を共にし、語り合い、時にぶつかりながらも友情を育んでいく。私にとって東アジアは、「対立する地域」である前に、人が行き交い、学び、働き、かけがえのない誰かと出会い、絆を育む地域でもある。

未来を切り拓く若い世代の挑戦と行動力

三か月ごとに行うピースボートの通訳ボランティアの面接でも、若い世代から勇気をもらうことが多い。「言葉を通じて地域の架け橋になりたい」「対立しているからこそ、相手を知りたい」。そんな思いを語る学生や若者たちに出会うたび、未来は政治家だけがつくるものではないのだと実感する。

大学で学生と接していても同じだ。つい先日、今学期の授業が最終回を迎えた。最後の課題では、自分にできる行動に果敢に取り組む学生たちの姿に、大いに刺激を受けた。
ある学生は、核兵器製造企業に投融資する金融機関に問い合わせ、なぜ核兵器への投融資を禁止しないのかと問うた。
別の学生は、行動を起こそうとする仲間を励ますオンラインプラットフォームをつくりたいと、すでに動き始めている。世界情勢を悲観するだけでなく、自分に何ができるかを真剣に考える姿に、私自身が励まされる。

一人ひとりの小さな一歩が歴史を変える

では、これから私たちは何をすればよいのか。特別なことではないと思う。世界とつながり続けること。そして、一人ではなく仲間と励まし合いながら行動を続けること。

最近、日本でも国会前のアクションが再び盛り上がっている。
参加者には若い世代、とりわけ女性の姿が目立つ。韓国で非常戒厳令に抗議したデモに背中を押された人も多く、ペンライトやのぼりなど、思い思いの表現を手に集まっている。海の向こうで声を上げる人々の姿が、ここ日本でも新たな一歩を踏み出す力になっている。

戦争がもたらす暴力や痛みは、国境を越えて広がる。
しかし、希望もまた国境を越える。だから私は、これからも市民と市民をつなぐ営みを続けていきたい。
それは、核軍縮に直結しない遠回りに見えるかもしれない。
しかし、核兵器禁止条約という成果が示したように、歴史が動くとき、その始まりには、いつも一人ひとりの小さな一歩がある。いつか山が動く、その瞬間のために、私は今日も船の上で、人と人とをつなぐ努力を続ける。

※小見出しは編集部

【注釈】
注1:ピースボートが2008年に開始したプロジェクト。広島・長崎の被爆者をはじめ、さまざまな核被害を経験した人々と世界をめぐり、核兵器の非人道性と被害の実面を伝えている。

畠山 澄子(はたけやま すみこ)さんのプロフィール

畠山 澄子(はたけやま すみこ)

ピースボートでは広島・長崎の被爆者の証言を世界に届ける「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」(通称:おりづるプロジェクト)や若者向けの教育プログラム「地球大学」などを中心に船旅のコーディネートに携わる。現在は立教大学で核のグローバル史を教えている。専門は核のグローバル史、科学技術と社会論。ケンブリッジ大学政治・社会学部卒業、ペンシルベニア大学大学院博士課程修了(科学技術史)。


輝け看護!

在宅医療の楽しさとは

私が在宅医療に携わったきっかけは、自身の家庭環境の条件に合うと感じたためであり、希望をしていたわけではありませんでした。
病院とは違い、患者さんのご自宅で、患者さんが生活している中で医療を提供するということは、主導権を患者さんに握られてしまった!と感じるくらいの衝撃がありました。スポーツの試合で言うと「away(アウェー)」の状態です。

最初は緊張の連続で、患者さんとの関係構築が上手くいかないことがありました。治療や生活改善の提案をしても、なかなか言うことを聞いてくれないことも多く、功を焦るばかりに強く勧めてしまうと、訪問拒否される可能性があります。
「どんな人の言葉なら聞いてくれるのだろう?」と思ったことがきっかけで、自分の態度を見直すことにしました。

まず、緊張した態度を見直しました。
私が患者さんなら、ベテラン看護師の話を聞くほうが安心すると思ったからです。ベテランでなくても、余裕のある受容的な態度であればそれなりに見えるだろうと思い、そのように振舞ってみました。

もう一つは、雑談を増やしました。雑談は余裕を見せる効果もありますが、患者さんの興味があるものを知るきっかけ作りにもなります。
そこに共通の話題があれば、信頼関係が早く築けることも発見しました。
先人達はこのようにして患者さんと関わっていたのかと思った頃には半年が過ぎていました。内服を拒否していた患者さんも、その頃には受け入れてくれるようになりました。

今では、患者さんが自分に信頼を寄せてくれたときの嬉しさが、仕事の一番のやりがいになっています。
これからも、たくさんの出会いを経て、自分を成長させていきたいと思います。

(かみよん訪問看護ステーション 田吹 香)

機関誌「みんいれんTOKYO」一覧はこちら

TOP