機関誌「みんいれんTOKYO」2026年4月号

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機関誌「みんいれんTOKYO」2026年4月号

みなさんの入職を心から歓迎します

「弱さ」を認め合い、「ケアが循環する社会」をともに創ろう

会長 根岸 京田

2026年度に入職される皆さん、東京民医連へようこそ。全法人、全事業所、全職員、そして共同組織を代表して、心から歓迎いたします。

2025年1月に再登場したドナルド・トランプ米国大統領の強硬な姿勢は、国際社会を大きく揺るがしています。自国の利益を最優先し、大国の力による支配こそが平和をもたらすかのような姿勢です。

しかし私たちは、20世紀における二度の世界大戦から、「力による平和」は決して成り立たないという歴史の教訓を学んだはずです。

国内に目を向けると、時代の閉塞感を背景とした衆議院選挙において、自民党が大勝しました。高市首相の施政方針演説で語られたのは経済と防衛力の強化ばかりであり、社会保障や医療・介護への言及はほとんどなく、まるで「稼げる人と国に貢献できる人だけが重要だ」と言わんばかりの状況です。

しかし、この選挙結果は自民党・高市政権への白紙委任ではありません。政治には、社会的弱者への配慮が不可欠なのです。

社会は、決して強い人たちだけで成り立つものではありません。一人ひとりの人間の中にも強さと弱さが共存しており、人は誰かに支えられ、また誰かを思いやりながら生きています。自分自身のものを含め、互いの「弱さ」を認め合うところから、真のケアは始まります。虚勢を張ることなく、誰もが安心して生きられる社会こそが、優しく住みやすい社会と言えるのではないでしょうか。

私たちは、ケアをする人もされる人も過度な我慢を強いられることなく、社会階層やジェンダーによって差別されることのない、ケアが何よりも大切にされる包摂的な社会を目指しています。

その実現に向けて、私たちが担う役割は極めて大きなものです。目の前におられる患者さんや利用者さんをケアすることはもちろんのこと、自分自身や共に働く仲間、家族、地域社会、さらには人類や地球環境をも思いやる広い心をどうか大切になさってください。私たちとともに、「ケアが循環する社会」を築き上げていきましょう。


共に学び成長するために、今知っておいてほしいこと

医師研修委員長 南條 嘉宏

新入職員の皆さん、入職おめでとうございます。皆さんを新しい仲間として迎え入れることができ、心から嬉しく思います。

私たちは患者さんや地域の人たちのために、共に学び、成長していく仲間です。新しい環境では希望だけでなく、不安を感じることもあるかもしれません。医療の現場には不確実なことも多く、頑張りすぎてしまうと、知らず知らずのうちに「燃え尽き」に近づいてしまうことがあります。だからこそ、今のうちに知っておいてほしい大切なことがあります。

まず「燃え尽き」ないために大事なことを四つお伝えします。第一に、一人で抱え込まず、仲間と一緒に仕事をすることです。相談することは決して弱さではなく、安全のための大切な技術です。第二に、自分では変えられないことにこだわりすぎず、今自分ができることに集中しましょう。

第三に、懸念や不安は自分だけで抱え込まず、他の人に相談してください。信頼できる先輩や同僚に共有し、解決の選択肢を一緒に増やしていきましょう。そして第四に、セルフケアを意識することです。セルフケアは特別なことではなく、日々を健やかに過ごすための「回復の習慣」です。

具体的なセルフケアの方法として、おすすめを五つ挙げたいと思います。
一つ目は、しっかり休むことです。睡眠を最優先で確保しましょう。短時間でも一人になれる時間を作るのも良いかもしれません。
二つ目は、自分に小さなご褒美を用意することです。時には少しだけ贅沢をして、自分を労ってください。
三つ目は、新しい学びに目を向けることです。学びは知識を増やしてケアを円滑にし、時には楽しみにもなります。
四つ目は、友人や家族と語り、笑う時間を確保することです。そして五つ目は、「できるようになったこと」に目を向けることです。

一人ひとりが適切に燃え続けられることで、チームとして安全で安心な医療を提供できるのだと思います。それが生活者としての患者さんを支え、地域の健康を守る力となり、より良い社会づくりの原動力になります。これから一緒に、共に学び成長していきましょう。


立ち止まっても、あきらめず、共に歩もう

副会長 渡邉 由絵

新入職員のみなさま、入職おめでとうございます。民医連の職場を選んでいただき、ありがとうございます。これから皆さんと共に東京民医連の事業所で、地域に求められる医療・介護の実践ができることを嬉しく思います。

皆様の新しい門出への期待が膨らむ一方で、ウクライナ、ガザ、そしてイランと、世界では大国による暴挙としか言いようのない戦争が起こされ、たくさんの一般市民が犠牲になるという悲しい事態が続いています。

そのような中でも、この国のリーダーは国会で、アメリカの大統領と一層強固な信頼関係を築くと発言するような状況です。私たち医療・介護従事者は、平和であってこそ、その職能を発揮し、地域の皆様の「住み慣れた地域で暮らし続ける」という願いに寄り添うことができます。多忙な業務のなかでも、かけがえのない平和を守る気持ちを忘れないでいてください。

3月に第58回東京民医連総会が開催され、人権、平和、ケアの倫理、まちづくりが重点方針に盛り込まれました。
その中でも「広がる貧困に対して、幸福追求権が侵害されている状態を貧困と捉え、構造的な問題に取り組む」と新しい提起がされました。

民医連の事業所で取り組んでいる「気になる患者さん」報告では、疾病だけでなく、貧困や格差・経済的問題、孤独や孤立等の社会的問題が、住み慣れた地域で暮らし続けることを阻む要因になっている事例が多くあります。

このような事例に出会うと、「私たちに何ができるのだろう?」と悩み、立ち止まってしまうこともあるかもしれません。
その時でも、諸先輩たちの「まず診る、援助する、多職種で、なんとかする」という姿勢を見習い、一つひとつの事例にこだわって集団の力を信じ、あきらめずに共に歩んでいきましょう。皆さんと、社会のより良い未来のために共に考え行動する仲間として、歓迎の言葉とさせていただきます。


初心を忘れず、ともにより良い医療・介護・福祉を目指して歩んでいきましょう

副会長 高田 満雄

東京民医連に入職された皆さん、本当におめでとうございます。先輩職員の一人として、皆さんを心から熱烈に歓迎いたします。

現在、世界では戦火が絶えず、日本国内でも貧困や格差が広がりを見せています。
さらに、高額療養費の限度額引き上げやOTC類似薬の特別料金徴収など、皆保険制度や健康保険法の理念そのものを揺るがすような制度改悪が進もうとしています。

このような情勢の中、医療・介護・福祉の現場を志した皆さんには、きっと「命を大切にしたい」「利用者の皆さんの人生に寄り添い、豊かにしたい」という尊い思いがあるはずです。
どうかその初心を忘れず、私たち先輩職員と共に「非戦・平和」を掲げ、皆保険制度を守り抜き、より良い医療・介護・福祉を目指して歩んでいきましょう。

私は薬剤師です。薬剤師の仕事は、患者さん一人ひとりの状況や考えに寄り添い、安全性・有効性・経済性に優れた「薬物治療の最適化」を、医師や多職種の仲間と連携して実践していく職能です。
また、現在は必須医薬品が手に入りにくい状況が続いていますが、医薬品の供給に責任を持つ「ロジスティクス担当」としての重要な役割も担っています。

慣れない職場や激変する医療情勢の中で、最初は戸惑うことも多いかと思います。しかし、新入職の皆さんが日々の研鑽を積み、奮闘されることを心から期待しています。ともに頑張りましょう。


輝け看護!

治療のモチベーションを保つ関わり方の工夫

A氏は35歳女性、母親と二人暮らしで生活保護受給中。20歳前に糖尿病と診断。
末梢神経障害遠位筋の低下で歩行困難。室内は四つん這いで移動している。母の入院を契機に孤立が判明し、訪問診療と訪問看護の介入となりました。自宅は足の踏み場もない住環境で、飼猫の糞も散乱、冷房をつけても外より暑い。若いA氏はケアマネジャーが不在のため、スタッフ二人で訪問しながら、ケアと環境整備に関わりました。

病識に乏しく、食事は電子レンジで温めて食べられる炒飯やカップラーメン、時にUber Eats。
検査データは徐々に悪化し、全身浮腫。
主治医が在宅治療の限界を説明し、大きな病院への受診を勧めるも、「猫がいるから無理」「Wi-Fiが無い病院への入院なんて有り得ない」と、拒否が続いていました。

ある時「推し」の話題になり、推しメンは「この人!」「かっこいいねえ〜」と話が弾みました。A氏の受診を勧めていた10月中旬は、特番放送が発表される時期。「○○が歌番組に出る。それを自宅で見たいから、その時期には入院は絶対にしたくないです」。
そこで、治療に臨んでほしい思いを伝えると、受診と入院日まで決めてくれました。

A氏の変化に胸を打たれ、推しに関連している物を手作りしてプレゼント。「ありがとう」と、キラキラした表情は印象的で素敵でした。A氏の推しを知り、共感し、コミュニケーションを図り治療に少しでも結びついているなら喜びです。

現在、腎不全が進行し、透析治療を導入する段階です。
思いを汲み取り、「推し」でコミュニケーションを図りながら、人生の決断を導くお手伝いが出来たらと思っています。

(おおもりまち訪問看護ステーションゆたか営業所 戸部 理恵)

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