機関誌「みんいれんTOKYO」2026年5月号

News
  1. ホーム
  2. 機関誌「みんいれんTOKYO」一覧
  3. 機関誌「みんいれんTOKYO」2026年5月号

機関誌「みんいれんTOKYO」2026年5月号

東京民医連第58回定期総会開催

「人権・平和・ジェンダー平等・ケアを大切にする社会」をめざして

3月14日、東京民医連は、第58回定期総会を開催しました。総選挙で316議席を得た高市政権による改憲への動きが強まり、また、米国による無法なイランへの攻撃が泥沼化する様相を呈する中、代議員180名が集まりました。

第58期方針案は、かつてない経営危機を乗り越えて、憲法と人権を基盤にした医療活動の推進と、地域での“まちづくり”を柱とするものです。全体会と分散会を通じて真剣な討議を行い、いくつかの修正をして、方針を確立しました。

平和の構築と社会保障の危機に抗して

開会の挨拶に立った山本博副会長は、緊迫する国際情勢や国内の大軍拡路線に触れ、「軍事費の増大は社会保障費の抑制とトレードオフの関係にある」と指摘し、憲法9条を守り、命を最優先にする社会を目指す決意を語りました。

続いて登壇した根岸京田会長が第57期中に逝去された6名の方の名前を読み上げ、参加者全員で黙とうをささげた後に挨拶に立ちました。2月の総選挙結果や物価高騰による市民生活への影響を危惧し、“誰も置き去りにしない医療と福祉を守る民医連の役割はますます大きくなっている”と強調しました。(詳細は会長あいさつへ)

「経営危機突破」と「医学生対策と医師養成」の強化

理事会を代表して総会方針案を提案した西坂昌美事務局長は、第6次長期計画の最初の2年間を振り返り、到達と課題を示しました。

法人・事業所が直面する深刻な経営危機を「民医連の団結と連帯」の力で突破することを最大のテーマとし、破綻する法人を一つとして出さず踏みとどまっているが、現状は多くの医科法人が未だ危機を脱却できておらず、より一層の経営管理水準の向上が求められると指摘しました。

また、医師の絶対的不足に対し、“自分たちの後継者は自分たちでつくる”という原点に立ち返り、医学生・高校生への働きかけを全職員で取り組む運動とし、奨学生の確保と初期研修とその後の専門医養成と確保の考え方を再構築していくとしました。

3つの考え方と5つの重点課題

西坂事務局長は今後2年間の活動を取り組む上での3つの考え方を示しました。①まちづくりの中に無差別・平等をめざす民医連の事業所の役割を位置づけ、いのちと健康・くらしを守る魅力ある活動を築き、新しい仲間が参加する好循環をつくりだす②医療と介護の未曾有の危機の中で一層の運動をすすめ、診療報酬や介護報酬の引き上げをめざす。一方、一定の改善があったとしても社会保障抑制政策が続く中で、民医連の事業と運動の継続に必要な経営改善・構造転換をすすめていく③民医連の連帯の力で困難を克服し、人権を基本に据えた医療・介護活動、職員育成、組織づくり、たたかいをすすめ新しい民医連の質をつくる、の3点です。
この3点を踏まえ、“まちづくり”“経営危機突破”“多職種での育ちあい”“医師の確保と養成”“県連機能強化”の5つの重点課題を提案しました。

正義であるかぎり幾度も繰り返され、やがて勝つことがある

昼食休憩後、10年・20年・30年勤続された職員1,039名の表彰を行い、代表して30年勤続された健生会の大日向いずみ看護師が感謝状を受け取り、挨拶をしました。
その後の分散会では226名、全体会で12名の代議員が発言し、方針案は補強されました。

方針案ほか、2024・2025年決算、2026年予算、2027年暫定予算が採択されました。
また、女性役員の登用(比率25.8%)や世代交代を考慮した66人の新理事が選出され、紹介されました。
高橋雅哉副会長が閉会挨拶に立ち、憲法9条の価値を強調して、絶対に戦争に加わってはならないと訴え、故高柳新氏(元全日本民医連会長)の著書から引用しながら「『一般に正義は必ず勝つというのは嘘だ。正義は迫害され続け、負け戦の連続なのだ。
ただ、正義であるかぎり幾度も繰り返され、やがて勝つことがある』我々は、やがて勝ちます。勝つまで続けます。頑張りましょう」という言葉で締めくくりました。

根岸京田会長のあいさつ

理事会を代表し、根岸からご挨拶申し上げます。

年明け早々のアメリカによるベネズエラ攻撃と大統領拉致、2月の総選挙、そして2月末の米イスラエルによるイラン攻撃と、国内外の情勢がかつてない激動の中にあります。
これほど世界が不安定で、人々の生活が先行きの見えない深い不安に覆われる中での本総会は、これまであまり経験のない事態ではないでしょうか。

2025年1月、アメリカではトランプ大統領が再び政権に就きました。
大国のリーダーの行動が国際秩序を乱し、多くの人命を奪う現実を私たちは目の当たりにしています。彼は就任前に「世界から戦争をなくす」と豪語しましたが、実態は徹底した米国第一主義です。
自国の利益のためなら他国の市民の犠牲も巻き添えとして許容する冷酷さが透けて見えます。かつて米国は他国を“ならず者国家”と非難しました。
しかし今、国際法を軽視して軍事力で傍若無人に振る舞っているのはどこでしょうか。
米イスラエルの行動こそ問われるべきです。東京新聞のコラムで前川喜平氏が両国を「世界の暴力団」と表現しましたが、まさにその通りです。この事態に追従するばかりの日本政府には、強い憤りともどかしさを禁じ得ません。

国内に目を向けると、2月8日の総選挙で自民党が単独で3分の2を超える議席を獲得しました。
生活苦に喘ぐ国民がここまでの大勝を望んでいたとは思えず、小選挙区制度特有の増幅効果に他なりません。

高市首相は施政方針演説で、経済力と防衛力の強化を前面に打ち出しました。
“成長のスイッチを押しまくる”と威勢良く語る一方、私たちが日々向き合う社会保障や医療・介護への言及は皆無でした。稼げる強者や国家に貢献できる者にしか関心がない、政権の冷酷さが表れています。

数の力を背景にした強引な国会運営も始まり、消費税減税は具体化しません。
その裏で中東情勢を背景とした物価高が生活を直撃します。2027年1月からは特別復興所得税の1%減税と引き換えに、防衛費のための同額増税が予定されています。
国民を顧みない政治が続けば、今のフワッとした政権支持層も遠からず離れていくでしょう。

さて、2026年度の診療報酬改定も明確になりました。全体として医療機関の役割分担を整理し、地域包括ケアシステムを機能させる方向へと舵が切られています。
地域医療ではかかりつけ医機能が強調され、在宅医療を含め地域に責任を持つ医療機関を評価する仕組みが構築されつつあります。
見方を変えれば、長年培ってきた「誰も置き去りにしない」民医連の実践が評価される要素も多く、追い風となる部分も多くあります。

しかし次期改定の2028年は、巨大与党の政治が続けば社会保障費削減が狙われ、極めて厳しいものになるでしょう。また医療法改正で医師過剰地域での開業制限がかけられたものの、東京はすでに進められた開業ラッシュで激しい競争下にあります。だからこそ、この2年間が正念場です。現場の知恵を出し合い、実践を積み重ねて医療活動の充実と経営基盤の強化を両立させなければなりません。

世界情勢が不安定化し、社会の分断と格差が深まる中、「強い者が勝つ」という価値観が蔓延しています。しかし、そのような時代だからこそ、「無差別・平等の医療と福祉を守る」という私たち民医連の活動、そして地域の役割はかつてなく大きくなっています。

目の前には厳しい現実が横たわっています。しかし、その現実を見つめつつも、連帯の中にある希望を胸に、この2年間を共に力強く歩んでいきましょう。


輝け看護!

QOL向上に繋がった清潔ケア

3年前に骨折をして以来、寝たきりの状態で過ごされていました。この度、呼吸困難を主訴に当院へ救急搬送され、入院となりました。A氏は兄2人と3人で生活されていましたが、主介護者であった次兄が入院したことで、高齢の長兄だけでは介護の継続が難しくなりました。自宅にお風呂はなく、以前は週に1回銭湯を利用されていましたが、ここ約3年間は一度も入浴できていないとのことでした。

来院時は全身の汚染が著しく、心電図モニタの装着さえ困難な状態でした。
そのため、外来と病棟のスタッフ間で対応を検討し、まずは全身の清潔ケアを最優先に行うことにしました。患者さんの同意を得た上で、1時間かけて機械浴を実施しました。あわせて爪切り、髭剃り、散髪なども行い、長期間付着していた皮膚の垢を丁寧に落としました。
入浴後に「さっぱりしましたか?」とお声がけしたところ、A氏は深く頷かれ、とても柔和な表情を見せてくださいました。

翌日からは、病棟看護師とケアワーカーが連携して連日の入浴を行い、継続的な清潔ケアに努めました。
その甲斐あって現在はリハビリも進み、平行棒内での足踏みや、車椅子に乗車して集団体操に参加できるまで回復されています。

清潔を保つことは人間の基本的欲求の一つであり、適切な介入によって皮膚トラブルや感染症のリスクを軽減することができます。
また、入浴後の表情の変化や反応から、身体的な爽快感を得るだけでなく、自尊心の回復やQOL(生活の質)の向上にも繋がったと感じています。

この事例を通して、患者さんの生活背景や個別性を踏まえたケアの重要性を再認識しました。
また、外来・病棟スタッフ、リハビリ専門職が迅速に連携できたことが、清潔の保持と、心のこもったケアの提供に繋がったと考えています。多職種で協働することの大切さを改めて学ぶ機会となりました。
今後も患者さん一人ひとりに寄り添った看護とは何かを常に問いながら、日々の業務に励んでいきたいと思います。

(柳原病院 川﨑 桃香)

機関誌「みんいれんTOKYO」一覧はこちら

TOP