機関誌「みんいれんTOKYO」2026年11月号

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機関誌「みんいれんTOKYO」2026年11月号

世界と毎日の生活・仕事から 憲法を考える

東京法律事務所 弁護士 加藤 健次

今、世界で戦争が続いています。とりわけ、国連の安全保障理事会の常任理事国であるロシアとアメリカが国際法違反の戦争をしていることは、これまでにない深刻な事態です。パレスチナでは、イスラエルの虐殺が止まりません。日本に目を向けてみると、高市首相は、連立相手の維新の会と一緒になって、憲法改正を進めようとしています。

このまま憲法が変えられて、戦争へと突き進んでいくのではないか。どうやったら、この流れを止められるのか。思い悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

戦争させない社会をつくるためにどうすればいいか。世界全体の流れと日々の仕事・生活の視点から、考えてみましょう。

自衛隊を憲法に書き込むとは

世界で戦争が起こっているのだから、日本も軍事力を強化して、「有事」に備えなければいけない。そのためには、憲法9条を変えることも仕方ないのではないか。なんとなく説得力を持つように思えますが、果たしてそうなのでしょうか。

憲法「改正」の最大の狙いは、自衛隊を憲法に「明記」することです。それは、今の自衛隊を「合憲」とすることにとどまりません。「専守防衛」など、自衛隊を「合憲」とするための制限をなくし、自衛隊が海外で自由に武力行使することにつながるものです。戦争と軍隊を放棄した憲法9条を「無力化」することといってもよいでしょう。

どうやって戦争をやめさせるか

では、今世界で起こっている戦争を止めさせるために、何をすべきなのでしょうか。

ロシア、アメリカ、イスラエルの戦争をやめさせるには、国際法違反の侵略に対して、正面から批判する国際的な世論と外交が必要です。現に、そのような声が広がりつつあります。

憲法9条は、よく「一国平和主義」と非難されます。しかし、憲法は、戦争と軍隊を放棄したからこそ、戦争が起きないよう、日本が世界で「汗をかく」ことを強調しています。憲法前文は、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と宣言しています。

戦争によって奪われる命と生活をわがこととして受け止め、戦争をやめるよう世界に訴えかけていくこと。それこそが、いま日本がなすべきことです。ひたすらトランプ大統領の機嫌をとるような姿勢では、戦争を止めることはできません。その一方で、「日本が攻められないように」と言って、攻撃的なミサイルを配備することのほうが、よほど視野の狭い発想ではないでしょうか。

軍事力で本当に平和が実現できるのか

つぎに、軍事力で平和が実現できるのかどうか、を考えてみましょう。

軍事力で平和を守ろうとすれば、他の国も同じ理屈でもっと軍事力を強めようとします。そこにあるのは、相手の「不信」と「不安」です。だからお互いに際限がありません。そして、軍事力の拡大は、何かのきっかけで武力衝突や戦争に発展する危険があります。

だとすれば、相互の「不信」と「不安」を取り除くために努力することのほうが、現実的ではないでしょうか。対話と外交によって、信頼関係をつくり、問題を解決していくということです。その覚悟を持ち、率先して努力を続けること。憲法が掲げているのは、まさにこのことです。

日頃の人権制約をまねきかねない「緊急事態」条項

憲法「改正」では、「緊急事態条項」を入れることも強調されます。災害、パンデミック、戦争などの「緊急事態」に備えて、政府の権限を強くしたり、人権を制限する条項を予め入れておこうというものです。「緊急事態」に名を借りた憲法の「一時停止」条項といってよいでしょう。

災害やパンデミックに対しては、日頃からの備えが何より大切です。新型コロナ感染拡大の最大の教訓は、パンデミックに対応するには、医療体制にゆとりをもたせておくことが絶対に必要だということです。病床をけずり、医療費を減らすことに血道を上げている今の政府に、「緊急事態」を語る資格はありません。さらにいえば、「緊急事態」を口実に人権を制限することを認めてしまえば、その前から徐々に人権が浸食されていくおそれがあります。

「個人の尊厳」を守ることは戦争を止めること

憲法は、個人の尊厳(13条)を軸にしています。戦争は、その対極にあるものです。「国家」を守ることよりも、個人の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(25条)を実現することこそが、優先されなければなりません。

日本の軍事費は、2023年以降急激に膨張し、10兆円近くになっています。その財源を確保するために、医療をはじめとする社会保障費が削減の対象とされています。「国を守る」といいながら、個人の命や生活を守る予算を削って、軍拡に回すことは、逆立ちした発想というほかありません。

軍拡をやめさせ、命と生活を守るために予算を使わせる運動を広げることは、戦争を止める大きな力になります。

一人ひとりの「つぶやき」からはじめよう

2月の総選挙以降、「なんとしても戦争を止めたい」という思いから、多くの人々が国会や駅頭で、それぞれが工夫した意思表明を行っています。一人ひとりの「つぶやき」を形にしたものといえるかもしれません。

「どんな人の命も守りたい」、「戦争はいやだ」――こんな思いをまずは「つぶやき」に。そして、「つぶやき」を集める対話を。

一人ひとりができることは限られていても、みんなのできることを集めれば、きっと戦争を止めることはできます。がんばりましょう。


輝け看護!

地域でともに考えるACP~一人ひとりの暮らしと想いに寄り添って~

東京民医連の常駐理事としての3年間、みなさんから民医連の医療・看護・介護の実践と思いを学ばせていただきました。今年、3年ぶりに現場へ復帰し、地域の課題と向き合う中で、今後の看護のあり方を見つめ直す機会がありました。

猛暑の日、受付で対応した80代女性は、認知症と気づかないほどしっかりした様子でした。しかし会話がかみ合わず、気になって自宅まで送ると、服薬カレンダーには薬が全て残っていました。

後日、外来や調剤薬局の担当者、ケアマネジャーと情報を照らし合わせると、「デイサービスの日以外にも来る」「予約より早く来る」など、誰もが変化を感じていたものの情報が共有されていませんでした。その後、近隣に住む息子さんの協力や関係者の見守り、連携を重ねて、現在はなんとか一人暮らしを継続できています。

この経験を通じ、「医療機関につながっている方でさえ発見が遅れそうになる。地域には誰にも相談できず困窮している方がまだ多くいるのではないか」と、強い危機感を抱きました。

認知症になっても住み慣れた地域で、その人らしく暮らし続けるには、縦割りを越えた連帯の仕組みが不可欠です。そして、これからどのような人生を歩み、どう暮らしたいかを多職種や地域のみなさまと語り合う「ACP(人生会議)」の視点が求められています。

患者さんを「まるごと」捉える民医連の看護を継承し、地域全体で支え合える関係づくりに貢献していきたいと思います。

(立川相互錦町クリニック 亀山 由佳)

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