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みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

リウマチ患者さん自己導尿の自立へ 訪問看護師の10カ月

 Mさんは40代で関節リウマチを発症。障害年金と貯蓄をたよりに1人で暮らしていますが、病気の進行とゆがんでいく手足に不安を感じ、生来の引っ込み思案がますます内向的になっていました。
 3年前、人工膝関節置換術を受けるためみさと健和病院に入院中、血尿出現。退院後の外来通院時に導尿が必要との診断を受けました。

自分には無理と思い込み…

 その後、Mさんを担当するケアマネジャーとその病院の看護師が訪問し、二日にわたって自己導尿を指導しましたが、うまくいきませんでした。Mさんは当然できるものと思っていたためショックを受け、「自分には無理だ」と思い込んでしまいました。導尿カテーテルを膀胱内に留置する案も出ましたが、Mさんはこれも拒絶。医師からは「常に膀胱炎を起こしている状態で敗血症を起こす可能性が高い。爆弾を抱えているようなものだ」と説明され、毎週2~3回は訪問看護師が導尿することとなりました。

練習しだいでできるはずと

 高州訪問看護ステーションでは、当初からMさんの様子を注意深く見つめていました。食事はフォークを使いますが、缶ジュースのふたもフォークを使って開けており、細いものを持つことも可能なはず。話しているときの身振り手振りでも、手が股間まで届いている。練習さえすれば、自己導尿もできるのではないかと。
 ところが本人に話してみても「無理よ、できっこない」の一点張り。導尿はすべて看護師にまかせ、自分は一切かかわりたくないとの強い意思がみられました。
 客観的に身体機能を評価し、Mさんに自信をもってもらおうと、みさと健和病院の作業療法士に同行してもらいました。案の定、自己導尿をすることに問題はないとの判断でした。それでもMさんは意欲を示しません。

初めてもれた積極的な言葉

 作業療法士が考案した、スポンジの穴にカテーテルをさし込む練習も、初めは拒否的でしたが、しぶしぶ挑むようになりました。導尿は尿道口にまっすぐカテーテルをさし込みますが、誤ってまわりに触れてしまえば、消毒からやりなおさねばなりません。少し角度が違うと途中でつかえ、曲がってしまいます。

 ようやくできるようになると、次は鏡に映ったスポンジを見て穴に通す練習です。感覚とは逆になるため「難しいねえ、気長にやりましょう」と、初めてMさんの口から積極的な言葉が。その後は消毒だけやってみたり、看護師の手に添えて挿入感覚をつかむなど、自立までには気の長い指導が必要でした。

信頼関係から無理なく援助

 医師からは、導尿は毎日2回は必要だと言われていました。しかし訪問看護師に頼っていては、2日に1回。導尿回数が少ないため血尿やドロッとした混濁尿がでており、一人でいるときに何かあったらと、たまらない不安をかかえていたことでしょう。
 自己導尿の自立でMさんの言葉は「だって、きちんとやらないと。自分の体のことだもん」と、大きく変わってきました。その自信は、表情が明るくなったことにも表れています。
 訪問看護ステーションでは「Mさんにはそれだけの時間が必要だったのだと思います。患者さんと一対一で向き合い、信頼関係を築きながら生活の中で無理なくとりくめたからこそ」と、訪問看護のやりがいを語っています。