東京民医連

東京民医連のご紹介

みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

第13回臨床研修交流会
東京民医連から7演題発表

 全日本民医連と医福生協連の共催による第13回臨床研修交流会が、10月10~11日、大阪心斎橋カンファレンスセンターで開催され、303人が参加。分科会、講演会、ポスターセッションなどを通して交流し、医師養成の取り組みや、初期研修・後期研修の発展について考えを深めました。東京民医連からは医師14人を含め28人が参加し、10演題を発表。今回は、その中から2演題について紹介いたします。

 

『老いゼミのすゝめ』

 皆さんは、高齢者医療についてどのようなイメージを持っていますか? 臨床研修交流集会で今回紹介させていただいたのは、新人やスタッフや地域住民を含めた年間プログラムです。
 発端は、「高齢者医療って必要なの?」という新人スタッフや医学生の素朴な疑問からでした。当時、私としては信じられないショックな言葉でしたが、この疑問を抱えている医療者は少なからずいることがわかってきました。
 しかし、我々医療者が対象とする多くは高齢者なのです。厚生省の資料からは高齢者の約86%は1カ月の期間に1度は医療機関にかかっており、その約81%は通院で医療機関にかかっていると言われています。昨今、2025年問題がささやかれていますが、2025年は、4人に1人が75歳以上という超高齢社会が到来します。
 「高齢者医療って必要なの?」という疑問は、いわゆるエイジズム(高齢者に対する偏見と差別)の問題や老年観(高齢者に対するイメージ)の乏しさが基礎にあると思われます。近年になり家族形態の変化から高齢者に接する機会がなく社会人となっている新入職員も多く、文献から接する機会が少なくなっていることも問題の一つと考えられます。
 なぜ、これを教育する必要があるかというと、例えば、老年観は高齢者の自己認識にも影響し、健康問題に関連していることや、否定的な高齢者に対するイメージを持つことが医療のケア質低下させる事がわかっているからです。つまり、極端に言えば高齢者と共に学ぶことは、高齢者は健康になり、医療者はケアの質が向上するということです。
 今ここにある医療が、将来の我々の未来でもあります。我々の未来を創っていくことに、全力で取り組むことは当然のことです。高齢者医療とは、未来を創っていく医療だと私は信じています。
 「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず。人は生まれながら貴賎上下の差別はない。賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとに由ってできるものなのだ」

(王子生協病院医師・泉水信一郎)

 《参考文献》最初に目を通すにはお勧め。ダウンロード可。
 “老人観”に関する研究の問題:桑原洋子、水戸美津子、飯吉舎枝 新潟県立看護短期大学紀要 第2巻1997年1月

 

臨床倫理4分割表を利用した家族カンファレンスを行い、方針を決定した経口摂取困難の85歳女性の一例

 女性は有料老人ホーム入所中でADLは寝たきり。慢性心不全、アルツハイマー型認知症のため当院より往診を行っていたが、誤嚥性肺炎のため入院。肺炎は治癒しましたが、覚醒にムラがあり経口摂取は難しいと考えられました。栄養手段などの検討のため、臨床倫理4分割表を用いた家族カンファレンスを実施。抽出された問題点としては、1、経口摂取を続けることは肺炎のリスクが高いが、家族は経管栄養は希望していない。2、家族は病院で過ごすよりは施設に戻ることを希望している。3、施設に戻るには、経口摂取しか選択肢がないということであり、ご家族は、肺炎のリスクを承知した上で経口摂取継続を希望されました。嚥下訓練を継続し、500キロカロリー程度の摂取が可能となったため施設に退院しました。しかし、その1カ月半後、肺炎を再発し、再入院。肺炎は治癒しましたが、嚥下機能はさらに低下。この時の長男は、「先生のおっしゃる通り、また肺炎になってしまいました」「今度こそ食事を続けるのは難しいと感じています」と、経口摂取は困難であることを受け入れました。施設に戻るより本人に苦痛を起こさせないことを優先させる選択をしたということになります。皮下輸液のみ行い、約1カ月後に亡くなられました。「先生方に最期の看取りまでやっていただけて母も本当に幸せだったともいます」と言っていただける穏やかな最期でした。症例の振り返りですが、初めは施設のこともあり経口摂取を望んでいましたが、経口摂取が困難だと家族で受け入れ、栄養方法を共に検討できました。家族にとって満足のいく最期を迎えられたと思われます。
 今回の症例は、本人と家族や家族内の意見の相違がなかったため、スムーズな家族カンファレンスでした。今後も、様々な家族カンファレンスを経験し、困難な症例でも上手にファシリテート出来るようになりたいと考えています。

表

(おおくぼ戸山診療所医師・松本真一)