東京民医連

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みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

超高齢化社会の中で、公的社会保障としての訪問看護・訪問介護の提供体制を守るために
職員に対する患者・利用者・家族からのハラスメント問題で対都交渉

東京都に4つの対策を要望
 10月31日、都民生活要求大行動の一環で東京都との交渉が都庁内で行われました。東京民医連が提出している要望の中から「訪問看護・介護での患者・利用者、家族からのハラスメント問題」について4つの対策を要望しました(都として調査、事業者向けの研修会・相談窓口設置、都民に対する啓発活動、医療保険・介護保険ではカバーできない場合の複数訪問助成制度)。東京都からは福祉保健局高齢社会対策部介護保険課から3氏が参加しました。


行政と事業所が連携とり早い対策を
 はじめに葛西英子東京民医連副会長は、「超高齢化社会の在宅療養・介護を支える上で、訪問看護・訪問介護が重要な役割を担っている」と述べました。
 続けて、「その人材確保はとても厳しいのに、さらに職員が患者・利用者・家族からの暴力を含むハラスメントにより、精神的ダメージを受け退職や休職に追い込まれる事態が起こっている」「患者・利用者宅へは看護師など一人の訪問が基本。訪問看護ステーションの平均人員は4・8人と小規模で、ハラスメント問題に独自に対策を取りながら事業運営を継続していくことは困難である」ことから、行政と事業所が連携した一刻も早い対策が求められると訴えました。

 

調査に基づく具体例に驚きの声
 二階堂規子東京勤医会訪問看護統括部長は、2017年9月に東京民医連で実施した調査()に基づき実態を報告しました。リアルな具体例には会場から驚きの声が上がりました。
 そのうえで、現行の複数訪問の規定は、医療保険では2018年改定で要件が拡大されたものの訪問看護は週1回に限定されていること。介護保険では(1)利用者負担が増えることを含め同意を得ることが難しいこと、(2)同意を得たとしてもサービス利用限度額の縛り(超えると10割負担)があることを指摘。兵庫県が実施している「訪問看護師・訪問介護員の安全確保・離職防止対策事業(複数訪問への一部助成制度、事業者の相談窓口設置・研修会)」を東京都にも要望しました。
 また、患者・利用者の人権を守ることと同時に、訪問看護・訪問介護職員の人権を守ることも大切であり、患者・利用者であってもサービス提供者への暴力ハラスメントは許されないという文化づくりが必要であると訴えました。

(※)【訪問看護師等が受ける患者・家族からの暴力・ハラスメント実態調査(2017年9月)から】三木明子関西医療大学教授(当時筑波大学准教授)の研究に協力して実施。以下のグラフはそのデータによる

 

 

 

 

<具体例>
・訪問途中に急激な眠気におそわれ、後でお茶に睡眠薬をいれられていたことがわかった。
・「一緒に死ぬ」とナイフを出された。
・包丁を向けられた。
・顔を肘で殴られ痣ができた。
・手元にあった新聞に火をつけ投げつけられた。
・訪問中もアダルトビデオを消さない。
・ベッドに押し倒された。

 

国の制度改善・都の施策確立めざす
 東京都の回答は「厚生労働省が実態調査や介護事業者向け対策マニュアルの作成を検討している」「小規模事業所であることは理解しているが、まずは事業所管理者に対応してもらいたい」「(カスタマー)ハラスメントの相談は、厚生労働省労働局の総合労働相談コーナーや東京都労働相談コーナーを利用してほしい」など、この問題に自治体として取り組む姿勢は示されませんでした。
 一方、複数訪問について「介護保険では利用料負担が増える等の理由から利用者同意が難しいことは理解している」と現行制度の限界についての言及がありました。
 東京民医連では、今後も同じ問題に直面している民医連外の事業所とも連帯して、公的社会保障としての訪問看護・訪問介護の提供体制を守るという立場を貫き、国の制度改善・都の施策の確立をめざして、粘り強く取り組んでいくことを確認しています。