東京民医連

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みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

手遅れ死亡事例調査の分析と提言で記者会見

 全日本民医連の「経済的事由などによる手遅れ死亡事例調査(2018年1月~12月)」における東京民医連加盟事業所の13事例の特徴と提言をまとめ、4月10日、都庁内で記者会見を行い、8つの報道機関が訪れました。根岸京田会長があいさつ、窪田光事務局次長が調査報告と提言、渋谷直道理事が無料低額事業と活用事例を紹介。記者の質問には谷川智行理事、葛西英子副会長も答えました。
 健康保険証を持っていても手遅れ死亡が起こる深刻な実態。その要因として全日本民医連は、(1)医療や介護の保険料(税)や負担金の大きさ、(2)生活保護の適用の狭さ、(3)行政の制度の申請主義の限界、(4)地域での孤立、(5)特に障害者を抱えた家庭などの複合的要因の5つを上げました。これに加え、東京・首都圏の特徴として(6)住居の問題があげられます。
 60代の男性は90代の母親と二人暮らしで母親の介護を行っていました。死亡4か月前ごろから顕著にやせてきました。母親の訪問診療に訪れた医師や看護師が気づき何度も受診をすすめましたが本人は受け入れず、死亡1か月前に進行胃がんが見つかり、その治療の矢先に自宅で死亡。賃貸マンションで生活困窮にはとても見えませんでした。後でわかったことは、家賃が月15万8千円で介護費用が月4万円。一方、収入は本人と母親の年金を合わせて月約20万円で貯蓄が底をつきつつありました。
 高齢者世帯・独居の方が住まいを変えるには大きな障害があります。転居費用、保証人、そして自宅死などで「事故物件」となることを敬遠する不動産業界です。医療や介護が必要となり生活が苦しくなっても、高家賃のままで過ごさざるを得ず、生活をいっそう苦しめます。
 会場の記者からの質問「13事例中11事例の死亡時病名が『がん』。なぜ、がん患者が多いのか?」には、がんの場合には患者さんとの最初の接触から亡くなるまで数か月程度あり、経済状況などを把握する時間があるが、一方、受診直後に死亡する場合(脳血管や心疾患など)は、基礎情報や背景を掘り下げる時間もないといった状況を谷川理事、葛西副会長が説明しました。
 会見では調査結果を踏まえ、4つの提言を行いました。(1)SOSが発信できない人々に対する行政と地域が協力した見守り活動、(2)「手遅れ死亡」を無くすための特定健診の活用、(3)孤独死に至る社会的要因の行政調査、(4)「手遅れ死亡」が多い国民健康保険(国保)加入者への、国保法に基づく保険料や一部負担金の減免の拡充。
 昨年11月の人権としての社会保障交流集会で「手遅れ死亡を生む負の連鎖を断ち切ろう!」をテーマとして確認していますが、この記者会見は、多職種・共同組織とともに取り組む運動の一環として行われました。今年11月に2回目の交流集会を開催し1年間のまとめを行います。