東京民医連

ニュース

みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

入職 おめでとうございます

ようこそ 東京民医連へ
東京民医連 会長 根岸 京田

 東京民医連の全職員および共同組織のみなさんとともに歓迎いたします。今年は新型コロナウイルス禍のため卒業式や入社式が縮小・中止になったかたも多いと思います。世界中の国ぐにが人や物の移動を制限し、経済にも大きなダメージが及んでいます。パンデミックを封じ込める対応として止むを得ない側面はありますが、社会的に弱い立場の人たちがより強くその影響を受けるということを忘れてはいけません。
 人間界には多くの社会格差、ストレスが存在します。それは人が集団で生活し社会を形成していく以上、避けられないことでもあります。人類はそれらの社会格差を実際の健康格差に発展させないために様ざまな社会保障システムを作り、そのコストをみんなで負担することで社会の安定を図ってきました。
 しかし、年ねんそのコストは上昇を続け、1980年代以降多くの国ぐにで新自由主義的政策のもと、その負担を減らすことに躍起になってきました。その結果、経済格差とそれに伴う“健康格差”は大きく拡大し平均余命や有病率の差となって現れています。今こそ一人一人の生命が尊重される社会の実現が望まれています。
 今回の新型コロナウイルス禍でわかるように、人や物の移動は急速かつ複雑であり、世界は分かち難く結びついています。どこかの地域、どこかの国の人の不幸をほっておかない、「誰も取り残さない社会」をつくることが望まれているのです。今回のパンデミックが落ち着いた時、世界の人びとが連帯し共感しあえるような動きが広がることを期待したいと思います。
 新入職員のみなさんがこれから出会う人たち、患者さんや利用者さん、先輩や同僚にも様ざまな立場や境遇があると思います。多くの人たちの考え方や気持ちに共感できる社会人に成長してほしいと思います。そのためにも“人権のアンテナ”を高く鋭く掲げて、民医連職員として成長することを期待しています。

 

技術、知識、経験をしっかり
東葛病院 腎センター長・初期研修委員長 土谷 良樹

 歴史に残るほど、Covid―19により社会全体が慌ただしく反応している状況の中での入職です。まずはこの感染症への正しい知識、社会不安への処方箋、地域を守るための力を身につけて、民医連職員としての第一歩を踏み出してください。
 安倍自民党政権による「アベノミクス」という経済政策により経済格差は拡大の一途をたどっており、目の前に現れる患者さんたちの中にも、その影響を強く受け、追い込まれている方がたが、なお一層、増えています。
 コントロールの悪い糖尿病患者さん、中断がちなアルコール依存症患者さん、せっかく見つけたのに治療を拒否する早期癌の患者さんなど、ややもすると「自己責任(本人がきめたことだから仕方がない)」と考えられがちですが、一人一人の患者さんの心の奥には、「クビになるので仕事を休めない」、「医療に支払うお金がない」、「癌の高額な治療費が心配」、「こんな状況で長生きしたくない」など、社会や政治によって起こされた現実に押しつぶされそうになっているケースも少なくありません。
 私たちは、病いや障害に苦しんでいる患者さんの心に寄り添い、本当の願いを探り、そして本人と一緒にそれを実現することを生業としています。地域の人びとも患者さんたちも、そこに大きな期待を抱いてくれています。
 みなさんはこれから、必要な技術、知識、経験をしっかり身につけ、目の前のたった一人の患者さんのために真摯に向き合って、民医連ならではの本当によい医療の実践のために、私たちと一緒に頑張っていきましょう。

 

出会いを大切に、一歩一歩
県連副会長 健和会 看護部長 葛西 英子

 今年の桜の開花はちょっと早めのようですが、春を待ちわびて一斉に咲き始めるモクレンや、こぶし、色とりどりのチューリップなどの花ばなと一緒に、みなさんの入職を心から歓迎いたします。
 また、各専門職のみなさん、国家試験合格本当におめでとうございます。私もかなり前ですが、看護師国家試験を受験し東京新聞を購入して自分の名前を見つけた時の安どした瞬間は今でも鮮明に覚えています。
 さて、みなさんは4月から新しい職場で研修や業務を始めるにあたり、緊張感の中でも様ざまな夢や期待に胸膨らませているのではないでしょうか。そんなみなさんに私からのエールを送ります。
 (1)人と比べず、あなた自身の見たこと、聴いたこと、感じたこと、考えたことを大切に研修や業務に臨んでください。(2)自分から心を開き、相手の目を見て挨拶しましょう。まずは、その日のはじまりの「おはようございます」から。(3)困ったら一人でためこまず悩み続けないで、話せる人に相談してください。周囲がサポートしてくれます。
 毎年この時期、緊張感に満ちた若くキラキラした新人さんたちの眼差しと存在が、私たちの職場に爽やかな風を運んでくれています。新型コロナウイルス感染症拡大の影響もありますが、患者さんや利用者さん、そして職場の先輩や仲間との出会いを大切に、一歩一歩あゆんでくださいね。

 

「対物」と「対人」を大切に
県連副会長 地域保健企画 代表取締役 島野 清

 新しく民医連薬剤師として入職されたみなさん、心から歓迎いたします。民医連の薬剤師は綱領に示された“患者の立場”にたって有効で安全な薬物療法を実践してきました。薬の専門家として私たちの先輩が薬物評価や副作用モニター活動など特色のある活動を切り開いてきました。2018年の8月には民医連新聞に掲載されている副作用モニター情報が500号となりました。集積された副作用モニターを国・製薬企業の情報ではなく、医療現場から情報を発信することは、利益相反に左右されず、集積された情報をもとに迅速な事例を発信することにつながります。
 なによりもこの情報は、民医連外の医療関係者・国民からもアクセスが可能な特徴があり活用されています。東京民医連の薬剤師はこのモニター情報にも多くの事例を報告してきました。
 さて、薬剤師のあり方が大きく変わろうとしています。「対物から対人」という言葉をよく耳にしますが、一般的にはこの対物業務は狭い意味での調剤行為を指し、必ずしも薬剤師でなくてもよいという意味で使用されています。
 私は「対物」は医薬品をきちんととらえる業務のことと定義し、「対物」と「対人」を対称的にとらえるのではなく、薬剤師こそその両面に適切に向き合うことが重要と考えています。二つを大切にしてこそ薬剤師の仕事が成り立つからです。
 これからも多くのことを学び経験し、“適切な薬物療法を提供する医療人”になっていただきたいと期待します。