東京民医連

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みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

7月4日都議選
都民のいのち第一の都政へ
コロナ禍のなか 医療や介護の現場では今
都議会議員 藤田りょうこさん、元区議会議員 福手ゆう子さんに聞く

 7月4日投票で東京都議会議員選挙が行われます。コロナ禍が続くなか、医療や介護の現場で起きていることや、働く私たちの思いを都政と結び付けて考えてみたいと思います。民医連出身で政治の分野で活躍するお二人に、編集部がお話を聞きました。

 

コロナ禍で今必要なことは
医療現場の実態伝え、制度改善へ

 ――都議会議員のなかで看護師は藤田さん一人ですね。看護師の経験を活かして都議会の場では何を一番に訴えてきましたか。
 藤田 現場の実態をリアルに伝えることが行政を動かし、制度改善につながると思っています。多くの都議会議員は医療の現場を知りません。夜勤の実態や子育てしながら働く看護師の大変さ、患者さんや家族がどのような生活背景から、手遅れになってしまったのかなど、都議会で現場の実態を伝えることで制度改善の大きな力になると思って活動してきました。

 

いのちを守る都政にしたい
 ――文京区議の経験がある福手さん、都政に求めたいことは。
 福手 東京保健生協で働いていた経験から「いのちが大切にされる政治」を実現したいとの思いで区議になりました。4年前は都議に届かなかったのですが、そのころに都立病院の独立行政法人化(独法化)の問題が出てきました。地元の都立駒込病院は地元住民にとって安心してかかれる信頼できる病院。そこにPFI事業(公共サービス提供において施設整備を民間業者に委ねて行う)が導入され、今度は独法化して、公的責任が投げ捨てられようとしています。医療機関で働いた者として、いのちを守る都政にしたいと切に思っています。

 

第4波のなか国や都がすべきこと
 ――コロナ感染は1年以上続き、第4波に入っています。都民のいのちを守るために何が必要だと思いますか。
 福手 これまで国は病床削減をすすめ、診療報酬、介護報酬を低く抑えてきました。保健所も統合され、文京区では2か所を1か所にして、人員も削りました。社会保障を削り、公衆衛生を軽視した政治が医療機関や介護の事業所を困難に陥らせ、コロナ禍で医療を崩壊させている。このような政治を改め、医療・介護の事業所に対しては減収補填して支えることが大切です。
 先日、病院で働く職員から話を聞きました。ずっと感染対策に気を使い、私生活も制限されている。病院では面会ができないのでターミナル患者に家族を会わせてあげられないストレスを抱えて、精神的にもギリギリで働いています。どの病院も懸命に頑張っているのに「民間病院がコロナ患者を診ない」などといわれています。今やるべきは、国や都が責任を持って、財政も使い、医療介護体制を整えていくことだと思います。
 藤田 いま東京は、コロナ病床を5000床確保しています。一部の都議はコロナ病床を7000床まで確保しろと簡単にいいます。病院は病床稼働が90%以上でなければ赤字になる低い診療報酬のうえ、医療従事者を増やさなければコロナ病床も増やせないのです。これまで国が病床を削り、診療報酬が抑えられてきたことがわかってないのです。
 東京都医師会が都内5万床の内1割をコロナ病床にといっています。現実的にはこれが限界だと思います。それを超えると手術などをいくら制限しても、救急が回らなくなったり、脳梗塞や心筋梗塞で命を落としたりする人も出てくる。妊婦の対応にも支障をきたすことになります。だからこそ、これ以上の感染患者を出さないように抑え込むことが大切です。
 コロナ病床を確保するうえでも、都立・公社病院の役割は大変大きいと思います。都立・公社病院では3つの病院をコロナ対応に特化するなど、都内のコロナ病床の34%を担っています。東京都が財源を握っているから出来ることです。病院まるごとコロナ対応にするなど民間では絶対にできないことです。だからこそ、採算重視の独法化は絶対に許してはいけません。

 

無症状者への検査の拡充を
 藤田 第4波を抑えるために緊急にやるべきことは、無症状者への検査です。広島県のように、心配な人が誰でも受けられるようにしないと広がりません。検査体制がないわけではありません。民間の検査会社の協力を得ながら進める必要があり、緊急の課題だと思っています。
 ――早い段階からPCR検査を増やすことが必要と専門家がいっているのに、全く追いついていません。何が原因でしょうか。
 藤田 PCR検査は、民間検査会社がかなり担っていますが、限りある検査機器が自費の検査にシェアを奪われ、行政検査(保険診療や自己負担なしで行う検査)の比率が把握できていません。民間の検査会社に財政保障もして、行政検査の拡大へ協力を求めることが必要ではないでしょうか。行政のやる気が問われます。もちろん、東京都の衛生研究所の体制強化は必要で、一年前から求めています。

 

ジェンダー平等・女性の困窮問題
「結婚や出産が女性の幸せ」という風潮

 ――話題を変えて、ジェンダー平等の問題です。日本のジェンダーギャップ指数は156か国中120位。お二人は実体験の中でどう感じていますか。
 福手 自分がやりたいことを実現しようとするときに、男性並みに働かなければ一人前として扱ってくれない、賃金が低く、安心して生活できない。東京保健生協に就職して初めて、女性の権利が守られ、やりがいも見出すことができました。ただ、そういうなかでも、「結婚、出産が女性の幸せ」という社会の風潮はあり、プレッシャーに感じました。その苦しみは今も続いています。文京区議になるときも、子どもがいないと一人前に認めてもらえないように感じることがありました。みなさん悪気はなく、普通の会話で「子どもはいないの?」という話がでてきます。子どもがいなくても幸せに生きられるし、そういう人も多く見てきました。

 

コロナ禍で生活困窮する女性
 ――厚労省発表の自殺統計によると女性の特に10代、20代の自殺率が高くなっています。コロナ禍が続いて、女性の困窮が深刻になっているとの指摘があります。
 福手 3月30日に、東京民医連などが事務局団体となって南大塚で行われた食料・生活支援プロジェクトにボランティアとして参加し、女性ブースで食料や生理用品、子どもの文房具などを配布しました。200人以上の女性が事前申し込みされました。小さいお子さんを連れた方が多く、10代、20代の方もいらっしゃいました。本当に多くの女性が困難に陥っていることを実感しました。実際にその場に来ている方は氷山の一角で、背後にはもっと多くの困窮する女性や子どもがいる。そもそも女性や子どもが弱い立場のままに置かれ、コロナ禍でさらに生活困難な状態に陥っているのだと思います。

 

女性がもっと政治の場に

 藤田 看護現場は、子どもがいる・いないにかかわらず、夜勤をこなし、労働組合や民医連の活動もやっていくことが求められています。自分はこれまで乗り越えることができたので、逆にジェンダーについて問題意識が薄く視野が狭かったと反省しています。共産党都議団は女性が多く、とても議論しやすいし、問題意識を共有できるのでありがたいです。
 苦しいのは女性だけではないんですね。男性であっても、ひとり親の場合は昇進をあきらめることもあります。日本ではリスクを抱えたことによって社会参加すら難しい状況になっています。もっと女性が政治の場に出ていかないと、弱い立場の実態に気づかないし、強いものばかり応援する政治になっていく。そういう意味でも困難を抱える方を支えているケア労働に従事した人が政治の場に出ていくことは大事です。

 

病床削減、75歳以上2割負担問題
いのちを軽んじる政治の極み

 ――国政では病床削減をすすめる法案、75歳以上の医療費窓口負担2割化する法案も審議されています。
 福手 怒りしかないです。消費税を財源に、補助金を出してベッド削減を進めようとしている。消費税は社会保障を充実させるためといっておきながら、コロナ禍でこんなことをするのは政治が腐っているとしか思えません。また、コロナで受診控えが進んでいるなか、それをますます加速させる後期高齢者の2割負担は、いのちを軽んじる政治の極みだと思います。
 かつて東京保健生協で、医学生と一緒に医師の働き方や過労死の問題、医学生の定員が増えない問題を学んできました。世界的にみて日本では人口当たりの医師数が少ない中で、さらに医師に過重労働を押し付け、医学部定員も減らす。経済効率のみを追求する新自由主義の社会では、いのちが守れないことのあらわれだと思います。地域のなかでも、利益のみを追いかけ、社会保障を削っていく社会ではだめだという声がよく聞かれるようになりました。コロナ禍で共通認識になってきていると感じます。

 

受診控えの健康影響は大きい

 藤田 コロナで受診抑制がすすみ、患者減により多くの病院が赤字を抱えているなか、それに便乗して病床削減をすすめるやり方は本当に許せません。実際、補助金を受け取らざるを得ない病院はたくさんあると思います。75歳以上の医療費の値上げについても、厚労省の審議会で7割以上の委員や日本医師会から、負担の重さや受診控えによる健康影響の懸念が示されています。
 都議会でも「75歳医療費現状維持を求める」意見書を国に出す陳情も出されましたが、賛成は日本共産党だけで不採択になりました。高齢者の医療費負担と収入の少なさの実態をどこまでわかっているのか疑問です。ここでもやはりケア労働や医療現場の経験者が政治の場にいないといけないと思います。

 

ストレス解消法は?
走るといい考え浮かんできます

 ――都議選の結果は、秋までにある総選挙にも直結します。私たちも民医連の立場で頑張っていきたいと思います。ところでお二人のストレス解消方法は。
 福手 よく食べ、よく寝ることぐらいでしょうか。あとは、かわいがっている甥っ子と遊ぶぐらい。
 藤田 そもそもストレスがないんですよね(笑)。走るのが好きなので都庁から走って帰っています。走ると前向きなホルモンが分泌されて、いい考えが浮かんできます。質問原稿で行き詰っていても、走っているときに「こういう質問したらどうだろう」って頭に浮かび、すぐにスマホに録音するんですよ。
 福手 私も走ってみようかな。時間がないと思って電動自転車を飛ばしながら、演説を考えてもいい案が浮かばない。逆に気分転換の時間をつくる方がいいのかな。

 

政治との関りについて
ケア労働を正当に評価する政治を

 ――職員のなかには政治に関わることをためらう人もたくさんいます。政治的な発言をすることにとても勇気がいるように感じます。なにかアドバイスがあれば。
 藤田 現場から見える矛盾に気づいてもらうことが大事かな。なぜ? と思ったことを掘り下げることが必要だと思います。実体験に結び付くことで何かを変えたいとか、よりよくしたいと感じて声をあげていけると思います。
 福手 一人ひとりの職員が身近な問題から感じたことを大切にし、それを発信していくことで共感がひろがっていく。現場の実態はそこにいる人が一番よくわかっているので、それを伝えることが大きな力になり、社会を変えていくことにつながると思います。
 コロナ禍で改めて、ケア労働は本当に尊い仕事だと感じています。しかし、ケア労働に携わる人の使命感や責任感を逆手に取られていることが許せないですね。
 ケア労働を正当に評価することが政治に求められています。その声を大きくし、大きなうねりをつくっていくことで政治が変わる。その力を持つのが現場で働く皆さんです。私も力を合わせて頑張りたいと思います。

 

藤田りょうこさん
 1996年城南福祉医療協会大田病院に看護師として就職。病院や訪問看護の職場で20年間勤務。
 2017年東京都議会議員選挙において大田区選挙区で初当選。現在、1期目。厚生委員会に所属。走ることが好き。

 

福手ゆう子さん
 2006年東京保健生協の医事課や医学生担当。2015年文京区議初当選。
 2017年の都議選は文京選挙区で215票差で次点となる。趣味は映画演劇鑑賞。