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みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

核兵器禁止条約締結国会議開催で核なき世界に向けて動き出す
反核医師の会常任世話人 立川相互ふれあいクリニック医師 青木 克明

核兵器廃絶に向けてのウィーン宣言と行動計画

 核兵器禁止条約第1回締約国会議が6月21―23日にウィーンで開催され、66の締約国とNATO加盟のドイツ、ノルウエー、オランダ、ベルギーはじめ、オーストラリアなど34のオブザーバー国、NGO代表など約1000人が参加した。日本からは5人の被爆者、4人の国会議員など約50人の参加となった。
 2歳の時、爆心2・5kmで被爆した朝長万左男先生(日本赤十字社長崎原爆病院名誉院長)の会議でのスピーチが長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)のHPで視聴できる。
 ドイツ代表は「核なき世界という目標は完全に共有している。ロシアが核による威嚇を行い、中国が核戦力を強化する今こそ、対話と議論を進めたい」とのべたが、日本政府は橋渡し役を務めるといいながらオブザーバー参加をせず、世界に恥を晒した。
 会議は政府代表とNGOが対等に発言するやりかたで進められ、普遍化(すべての国の条約への参加)、被害者援助、廃絶のプロセスと検証の3本柱でワーキンググループを作っていくことを決定した。
 「核兵器のない世界へのコミットメント」ウィーン宣言では、核兵器禁止の確立は国際連合憲章の実現に向けたものであり、核兵器使用の脅威は国際平和と安全保障にとってリスクを高めるだけで「核抑止論」は誤りと指摘している。核兵器の近代化と開発を継続する核保有国のみならず、「核の傘」の国も厳しく批判し「核兵器がもたらす壊滅的な危険性に直面し、人類の生存のためには他の行動をとることはできない。我々は開かれた道はすべて進み、まだ閉ざされている道を開くために粘り強く取り組む。我々は最後の国がこの条約に参加し、最後の核弾頭が解体・破壊され、地球上から核兵器が完全に廃絶されるまで休むことはない。」と結ばれている。
 「行動計画」では核兵器禁止条約の目標実現のために、普遍性、核兵器の全廃に向けて、被害者支援および環境修復、国際的な協力および援助、核兵器禁止条約を効果的に実施するための科学的・技術的助言の制度化、核兵器禁止条約と核軍縮・不拡散体制との関係について50項目が示された。
 第2回の締約国会議は2023年11月27日~12月1日にNYの国連本部でメキシコが議長国になって開催、第3回はカザフスタンが議長国に決定し、早いテンポで禁止条約実践のプロセスが始まった。
 議長を務めたオーストリアのクメント軍縮大使は「道筋ができた。さぁ、仕事をしていこう」と締めくくった。

 

ICAN市民社会フォーラム

 6月18、19日にICAN市民社会フォーラムが40のセッションで開催され600人が参加した。
 「南オーストラリア、広島、長崎からのライブ中継」ではオーストラリアの英国核実験被害者、広島の原爆小頭症被爆者、長崎の被爆者が発言した。
 原爆小頭症は胎内被爆による障害で頭囲が小さく、知的障害、身体障害を持つものが多く、小頭症被爆者と家族が「きのこ会」という集まりをつくっている。原爆小頭症被爆者、川下ヒロエさんによる詩の朗読があり、「おなかのこどもに放射線の影響を与えてしまうのは罪だと思う、戦争も核兵器もない世界を私たちは心から望んでいる」と訴えた。
 「北東アジア非核化セッション」では、元広島市長の秋葉さん、モンゴルの非核地帯に貢献したエンフサイハン大使、韓国の活動家が登壇した。秋葉さんは、日本政府がどういう対応を取るべきかを強く訴えた。モンゴルと韓国からの登壇者は、核兵器廃絶という目標に向けて市民社会も一緒に行動していかなければならないと主張した。

 

若者の活躍

 日本のNGO参加者のうち15人以上が若者であり、WEBサイトをたちあげて現地リポートをおこなって市民フォーラムなどに積極的にかかわった。締約国会議の前日にオーストリア政府が主催した「核兵器の人道的影響に関する国際会議」では長崎の被爆3世である中村涼香さんが着物姿でスピーチをした。
 Youth Orientationでは各国の若者、NGO代表が被爆者の家島さん、木戸さんの証言を聞き、交流をした。これからの運動を担っていく各国の若者たちの連携を深めていくことをめざし、来年の「広島G7」での再会を約束した。

 

NPT再検討会議の前進に向けて

 核不拡散条約(NPT)は1970年に発効し、米、ロ、英、仏、中を「核兵器国」と定めて、その他の国への核兵器の拡散の防止、核軍縮、原子力の平和利用を掲げている。5年ごとに再検討会議が開催されるが、2015年の会議では実質事項に関する合意文書を採択することができなかった。2020年の会議はコロナで延期となっていたが8月1日からNYで開催される。核兵器禁止条約締約国会議の実績を受けて核軍縮の前進が期待される。
 「核兵器廃絶日本NGO連絡会」はNPT再検討会議に参加する岸田首相と林外相に対して以下の要請をおこなった。
1、核兵器国が、これまでの約束を守って、核軍縮に一層努めるよう求めること
2、核兵器の非人道性について、最終文書にきちんと書き込むこと
3、少なくとも「核兵器を先には使わない」ことを約束させること
4、核兵器の材料を生み出す再処理計画はやめること
5、核兵器禁止条約の意義を認めて、明記すること
 核なき世界の早期実現のために、日本が核兵器禁止条約に参加し、米国の核の傘から脱して北東アジアに非核地帯をつくることを目指して声を上げ、活動を続けていこう。

 

青木克明さんのプロフィール
反核医師の会常任世話人/立川相互ふれあいクリニック医師
1948年 被爆者である母の長男として広島市段原大畑町で生まれる
1974年 横浜市立大学医学部卒業
1974~84年 神奈川民医連・川崎協同病院、汐田総合病院に勤務
1984~90年 長野民医連・健和会病院に勤務
1990~2019年 広島医療生協広島共立病院に勤務
2002年~07年 同病院長
2017年~19年 同理事長
2019年~ 東京民医連・立川相互ふれあいクリニックに勤務