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みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

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 「あの頃なら、黒い雨のことを人に話しても、毒素があることは誰も知らんので、誤解されなんだでしょう。でも、今じゃ毒素があったこと、誰でも知っています」井伏鱒二の小説、「黒い雨」の一節です。原爆投下後に降った黒い雨は原爆被害の象徴でもあり、広島平和記念資料館には「黒い雨のあとの残った白壁」の展示があります。原爆由来の放射性物質は爆発火災で舞い上がった灰やチリなどに付着し、灰が降雨とともに降下すると黒い雨となります。雨が降らなくとも降灰も放射性物質が降り注ぐことに変わりなく、黒い雨はこうした放射性降下物の総称と捉えることに合理性があります▼昨年7月の広島高裁での「『黒い雨』訴訟」原告勝利判決を契機に、今年4月、被爆者の審査基準が改定され黒い雨に遭ったことをもって被爆者として認定されることとなりました。「がんや肝硬変にかかっている」という認定要件がありますが、原爆投下から76年余りを費やし、黒い雨被爆者に救済の道が開かれました▼今回の審査基準改定は対象が広島に限定され、長崎の黒い雨被爆者は蚊帳の外におかれています。長崎県は7月、政府に「長崎でも黒い雨が降った」「降灰の体験者が非常に多い」などの専門家会議の報告書を提出しました。国は報告書を真摯に受け止めるべきです。(目)