東京民医連

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みんいれんTOKYO(機関紙)1面の記事の抜粋です

新型コロナウイルス感染拡大第8波に備えて
立川相互病院副院長 山田 秀樹

 2年半以上にわたるコロナ禍での全事業所の奮闘に敬意を表します。
 感染流行も下降線となり、医療・介護現場のひっ迫感も薄らいできていることと思います。この間、国民の行動制限が緩和された一方で、医療介護の現場では従来通りの行動規則が求められてきました。第7波を振り返ってみれば、「社会経済活動との両立」の中、なりゆきまかせの政府のコロナ対応によって、過去最多の感染者数と死者数を生み出す結果となりました。全国の民医連の事業所の状況を見ても、クラスターはこれまでにない規模で発生しています。わたしたちは、自分自身と患者・利用者、職場を守るために、引き続き感染対策に取り組む必要があります。
 第8波は必ず来ると考えられています。また、エビデンスにもとづかない感染者の療養期間の短縮が行われたことで、今後の市中感染のリスクは以前より高まったとも考えられます。第8波に備えて、今からできる対策に取り組みましょう。

 

1、換気の重要性 について
 国立感染症研究所がエアロゾル感染を認めたこともあり、換気の重要性が強調されるようになりました。パーテーションをどの事業所も設置していると思いますが、換気を妨げないよう、空気の流れに平行に設置することが求められます。あらためて確認しましょう。

 

2、ワクチン接種について
 この冬、早い時期からのインフルエンザの流行が懸念されています。オーストラリアで流行がみられたことがエビデンスとされ、日本ではこの2年間インフルエンザ流行がなかったことが背景にあげられます。インフルエンザと新型コロナウィルスの重複感染例では、肺炎の重症化の可能性が報告されています。インフルエンザワクチンについて、アレルギー等の無い接種可能な方については積極的に接種を受けましょう。新型コロナワクチンとの同時接種について、海外の研究では、安全性や効果に問題は見られなかったとされています。同時接種を行うか否かはそれぞれの事業所の方針にのっとって対応して下さい。
 オミクロン株になって、ワクチンの感染予防効果が低下することがわかり、4回目のワクチン接種がすすめられています。9月から、2価ワクチンの接種が開始されました。認可された2価ワクチンはBA・1対応のもので、BA・5対応型は日本ではまだ認可されていません。副作用は既存のワクチンと同等と言われており、従来のワクチンと比較して、オミクロン株に対する重症化・感染・発症予防効果がそれぞれ強いこと、また、今後のあらたな変異株についての有効性も期待されています。長引くコロナ禍で罹患後の後遺症も問題になってきていますが、ワクチン接種回数が多いほど後遺症が残る割合が低下することも報告されています。
 第7波になって、子供の重症化例・死亡例の増加が話題になっています。新型コロナワクチンを接種できない年齢のお子さんを持つ場合、両親がワクチン接種を行うことで、子供の感染リスクが減ることがわかっていますので、この点も考慮して下さい。

 

3、抗原定性検査について
 職員用に自治体から送付された抗原キットが多くの事業所で活用されていることと思います。セルフチェックができるようになったことは運動の成果でもあり、喜ばしいことですが、その限界についても正しい知識を持つ必要があります。
 第7波では、自己抗原検査で陰性であったにもかかわらず、PCR検査で陽性になった職員が複数見られました。PCR検査に比べ検出感度の低さ、拭い方(鼻前庭では検出率が落ちること)や採取時期によって偽陰性になることがあることから過信せず、有症状の場合は早期にPCR検査を受けるようにして下さい。薬局やネットで購入する場合、「研究用」ではなく「医療用‥体外診断用医薬品」の認可を受けているものを使用しないと確定診断ができないので注意して下さい。

 

4、外来医療体制の整備を
 インフルエンザが流行した場合、発熱外来や救急外来がこれまで以上にひっ迫する可能性があると考えます。第7波ではアセトアミノフェンの供給不足が社会問題になりました。いまから診療体制の検討や、必要な薬剤や抗原検査キットの確保をすすめましょう。

 

5、社会に向けて発信を
 介護事業所で起きたクラスター対応への補償が極めて少ないことが問題になっています。これまで、その時々の問題を民医連事業所が新聞・テレビ等で訴えたことで様々な成果につなげることがありました。引き続き現場の困難についてはしっかり声を上げていくことが必要です。

 

6、最後に
 民医連のある事業所の調査では、クラスターを繰り返す病棟は、ほかの病棟に比べて、手指消毒用エタノールの消費量が少なかったことが報告されています。単に手指衛生の問題だけではなく、構え方の違いが結果に表れているのでは、との教訓です。
 感染対策に奇策はありません。基本的な感染対策(手指消毒・正しいマスクやアイシールドの着用と活用・3密回避‥換気・ワクチン接種)の再点検と徹底をはかりましょう。