東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

結婚記念日を手作り首飾りで

 当病棟は内科、外科混合病棟です。煩雑な病棟の中で私たちの看護は本当にこれでよいのか、もっとできることはないかという思いがありました。そして緩和 ケアチームを立ち上げ数年経ちました。遺族訪問で看護を振り返る機会とし、ケア中の方にアロマテラピーを取り入れ少しずつできることが増えています。患者 さんに寄り添い患者さんの願いを叶えるために誕生日会をしたり、お酒を少しだけ楽しんでいただいたり、ペットと再会したり。
 A氏(73歳、男性)は奥様との2人暮らしです。在宅への家族指導と往診や訪問看護を準備して退院した方です。
 胃潰瘍穿孔による腹腔内膿瘍で開腹手術。原発不明の腹膜播種を認め癌性腹膜炎と診断、胃ろう造設、Vポートの埋め込み在宅調整をすすめました。
 家族と数回面談し、A氏へ病状説明を行いました。落胆は大きく、看護師も様子をきめ細かく見守りながら、数日が過ぎました。「なんとなく分かっていた」 という言葉が聞かれ、「はっきり自分の身体の状態がわかってすっきりした」と在宅退院を考えられるようになっていきました。
 準備をすすめ、むかえた退院当日に38度台の熱がでて延期になってしまいました。「今日は自分達の結婚記念日で特別何か考えていたわけじゃないけど家で ゆっくりしたかった」と。その一言から私たちは何か出来ないか、即席で首飾りを作り、奥様が面会に来たら、記念写真を撮ろうと作戦をたてました。
 私たちは主治医も呼んで、A氏の部屋へ集まり「今日が結婚記念日だと聞いたので」と首飾りをプレゼントしました。
 奥様は「お父さん余計なこと言ってー、病院って所は恐ろしいわ!」と照れてなかなか写真に写ろうとはしません。A氏はベッドに座りピースサインでポーズ をとっています。10分くらいかかりましたが何とか説得しみんなで写真を撮ることが出来ました。奥様は、涙ぐんでいましたがA氏はニコニコしていました。 数日後、A氏は自宅退院できました。
(小豆沢病院・2009年新年号掲載)