東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

百歳の母、介護熱心な長男宅へ

 百歳の女性が脳梗塞を発症し、麻痺・失語症を残して(回復期病棟に)入院しました。子どもは長男が80歳近く、娘が3人。
 患者さんは、長男が朝から晩までそばに居ることで安心しているようでした。長男は昔、病院の事務をしていた方で「母親は回復する」と期待を持っていました。
 栄養を摂るために経鼻経管栄養になりましたが、頻繁に管を抜いてしまうために、やむをえず、手を抑制することもありました。長男は「これでは寝返りができない」と看護師を非難されました。
 ベッドにはエアーマットを備えましたが、「送風音がしない、業者を呼んでくれ」と怒ることもありました。納得がいかないことがあると、「責任者を呼んで 下さい」となり、一方的な要求や繰り返しの質問に、看護師はやりきれない気持ちに陥っていきました。
 しかし、このままでは進展しないと、家族への対応を含めどうしていったらいいか話し合いました。私たちは、長男や娘たちの生活背景を知り、その思いを受 け止めながら、患者・家族と寄り添う努力をしていきました。その中で、長男の思いは「退院後は在宅でみたい」ということが分かりました。
 退院にあたっては、経鼻経管栄養で医学的管理が必要なこと、子どもたちが高齢で遠方であるなど、在宅か施設かは二転三転しました。
 娘たちは、家で見たいという兄の気持ちは分かるが、現実的には難しいと思い、何回も家族会議を行いました。施設見学に行かれた長男は「施設では母が死を 待つようだ」という印象を受け、在宅への退院を強く希望され、娘たちも最終的に同意しました。
 退院に向けて、長男が理解しやすいようにケアについて説明を行いました。家族・医師・看護・地域とで話し合い、埼玉在住である長男宅に退院して行きました。退院時の長男の表情は穏やかなものでした。
 一カ月後、長男宅に電話し様子を聞いてみると、元気にされていました。患者、家族に寄り添うことの大切さを忘れず、あきらめない看護を続けていきたいと思います。
(立川相互病院・2009年10月号掲載)