東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

Mさんの努力と思いに寄り添い

 Mさん、70歳代男性は、40歳代で糖尿病を発病し、インスリンを打ちながら仕事をしていましたが、3年前に脳梗塞を患い左麻痺の状況になりました。
 結婚歴がなく独居生活で、今はヘルパー支援とデイサービス、医療面では訪問診療と訪問看護でフォローしています。
 退院時は要介護4でしたが、その後の更新で要介護2になり、ヘルパー支援等を減らされてしまいました。
 訪問看護のほかに、リハビリスタッフが訪問リハビリをおこなっています。マッサージや他動的な関節運動はさせてくれますが、歩行訓練など実用的な訓練には一切応じません。
 「動けるようになると介護を減らされる」とMさんは言います。「寝たきりになりたい」と横になっていることが多いMさんに、リハビリの必要性をいくら話してもどこ吹く風といった具合でした。
 この冬、とうとう排泄について問題になり、ポータブルトイレ導入となりました。
 「早く買えば良かった。そうしたら介護度が上がったかもしれない」と相変わらずな発言でしたが、実際にはほとんどポータブルトイレを使用していない様子なのです。
 本人になぜ使わないのか問えば「ヘルパーに使わないように言われているから」といいますが、本心は「ポータブルトイレに頼ってはいけない」と思っているのでしょう。
 いつも面倒くさそうな態度をとり、屁理屈をこね、リハビリも消極的なMさん。故にやる気が無い人と思われがちで、私たちスタッフは、あまり良い印象を持っていませんでした。
 Mさんは自分の障害を受け入れきれず、また介護度を減らされたことで見放された感があったのかも知れません。しかし、寒い日でもデイサービスに休むこと なく通い、その都度、団地の階段を3階まで上り下りしていることや、歩いてトイレに行っている様子に、私たちのMさんへの見方も変わってきました。
 これからもMさんの努力を受け止め、思いに寄り添いながら訪問看護を続けたいと思います。
(十条訪問看護ステーション・2010年2月号掲載)