東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

家族の協力得られぬ高齢者

 糖尿病のKさんは79歳男性。奥さんと息子さんの3人暮らし。09年秋頃から血糖のコントロールが悪くなり入院し、インスリン注射が開始されました。
 自己注射を覚えて退院しましたが、軽度の認知症があり視力の低下もあるため、すぐに悪化し再入院となりました。退院に向けて、家族の協力が得られないので外来でインスリン注射はできないかと相談を受けました。
 私たちは、「Kさんが認知症の奥さんを面倒みている状況で、息子さんにも協力してもらえないなら自宅療養は難しいだろう。Kさんが同意すれば通院しても らってもいいのでは」と話し合い受けることにしました。そして09年10月退院日より、朝夕2回のインスリン注射のための通院が始まりました。
 気難しいKさんでしたが、意思を尊重しながら接したことで、少しずつ家族のことを話されるようになりました。息子さんのことも「厳しく育てすぎたかもし れない」「ほとんど口を利かない」「食事は妻の分しか作ってくれない」などと話され、協力を求めたがらない理由がわかってきました。
 そのため、キーマンである息子さんには親子関係に配慮し、Kさんの了解を得ながら電話や手紙などで協力を求めました。また、包括支援センターの担当者にも相談し解決の糸口を模索しましたが、結局、一度もお話しすることもお会いすることもできませんでした。
 そして、10年夏に病状が悪化し、通院も困難になり再入院となりました。主治医の働きかけなどでようやく息子さんとの話し合いができて、現在は有料老人ホームへ入所されています。
 一見「介護放棄」と思えるケースですが、家族の協力が得られない高齢者は多く存在するのではないでしょうか。家族との関わりは私たちだけでは困難な面もあります。
 「Kさんの危機を救った」という思いはありますが、自分たちだけで抱え込まず、行政や地域で救えるようなシステムが必要だと感じました。
(東京健生病院・2011年2月号掲載)