東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

将棋に生きる Sさん

 Sさんは100歳をめざして日々頑張っていた。
 戦前、浅草で薬剤師として開業していたが、東京大空襲により妻の実家の流山に疎開し、そのままこの地に住んだそうだ。
 数年前に認知症が進んでいるSさん宅を往診、同行看護師として初めて訪問した。新興住宅地の中のブドウの木やミカンの木がうっそうと繁る広い敷地に息子 さん宅があり、その離れに一人暮らしをされていた。当時は、前年にお亡くなりになった奥様のことを、「どこに行ったんだか、いないんだよ。早く探してきて くれないか」と繰り返し訴えられていた。
 心不全もありトイレが間に合わず部屋は尿臭も漂っている。テレビを大音量につけて終日ソファーに座って、主に息子嫁を中心としたヘルパーや訪問看護など の支えで暮らしていた。自室の窓からの転落事故などもあったため、ケアマネジャーさんは、認知症の進行を危惧してデイサービスを何度か勧めていたが、ご本 人の了解が得られずにいた。
 その後は看護学校の在宅訪問実習として1、2科併せて年に数回、訪問を受けていただいていた。学生の時間をかけた訪問の中で、定年退職後は毎日将棋会所 に通っていたほどの将棋好きと分かった。学生相手の将棋では「出なおしておいで」と言うくらい、学生さんはまったく歯がたたなかった。将棋のできるデイ サービスを探したが、将棋以外のプログラムにも参加できることがデイの受け入れ条件で、将棋だけの参加では該当しなかった。
 そんな中、友の会の将棋サークルで月1回例会があるのを聞き、往診医師とご家族・本人に勧め参加することになった。当日ボランテイアで医師が迎えにいくが、Sさんは忘れていた。
 説明すると「行こうかな」と車イスに乗る。会場では2番・90分集中して60代の会員さんを負かしてしまった。まわりのみんなを驚かせ、逆に私達が励まされた。認知症の○○さんではなく、人間はいくつになっても発達すると教えていただいた。
 (東葛看護学校・2012年4・5月合併号掲載)