東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

「ウナギ食べたい」の願い叶い

 私の勤務する透析室には、高齢者、独居など一人で日常生活を送ることが困難な生活背景の患者様が多くいます。
 時には、家族以上に患者様と接し、亡くなるまで関わることも珍しくありません。そんな中、職場スタッフが同じ気持ちで対応し、看護に充実を得ることができたケースを紹介します。
 Aさんは90代女性、独居。ヘルパーさんの生活援助を受けながら、透析に通院していました。とても社交的な性格で外出が大好きでしたが、一人では買い物にも行けず、頼める相手もいませんでした。
 そこで、透析室スタッフが休みの日にボランティアでAさんをデパートに連れて行き、自分で化粧品や惣菜を購入するお手伝いをしました。とても楽しそうで満足そうな表情でした。
 数日後、Aさんの容態が悪化し入院。食欲も低下しているAさんが「宮川のウナギが食べたい」と繰り返し言うようになりました。
 終末期を迎えるAさんの願いを叶えようと、透析室スタッフはウナギを食べさせてあげることを計画しました。スタッフがお金を出し合い、ウナギ屋の協力も得て、うな重を購入。
 しかし、Aさんの体力はすでに低下しており、ウナギは一口しか食べられませんでした。それでもAさんは笑顔でとても満足そうな表情を見せてくれました。その笑顔を最後にAさんは永眠されました。
 スタッフ全員でAさんの願いを叶えることができたのは、とても嬉しかったです。そして、満足そうなAさんの表情を思い出すと、計画して良かった、と充実感があります。
 医療行為だけの看護ではなく、患者様の生活背景を知り、寄り添う中で何がしたいのか?何をしてほしいのか?要求を引き出し、計画・実行していくことがとても大切だと思いました。
(東京健生病院・2012年10月号掲載)