東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

グリーフケアを通して学ぶ

 「グリーフケアとは、愛する家族との死別後、遺族がグリーフワーク(喪の作業)を十分に行い、新しい出発をすることを支援することを言う」
 Tさんは左乳がんを患う70歳の女性。次女Yさんとの二人暮らし。余命宣告を受けていたが、Yさんは受け入れられずにいた。
 そんな中、入浴中に溺水しTさんは亡くなってしまった。発見したのはYさん。十分な心の準備もなく、最愛の母を衝撃的な形で亡くしてしまったYさんの悲痛な思いは、計り知れなかった。
 グリーフケアに伺って半年を経た頃、「看護師さんに会うとあの時のことを思い出して辛い」と告白された。私自身がフラッシュバックの引き金となり、Yさんを苦しめ、グリーフワークを障害していたのだ。私は十分な看護ができなかった後悔や、看護に対する自信をなくし、気持ちの区切りをつけることができなくなってしまった。
 この頃、余命いくばくもないすい臓がんのFさんの訪問看護を開始した。日に日に衰弱するFさんのケアと奥さんのメンタルヘルスケアのため、ほぼ毎日訪問看護に伺い、2週間後に奥さんとともにFさんを看取った。
 亡くなった後、グリーフケアに訪れた私を「戦友」と称し「本人もあたしも満足。ありがとう」と一緒に泣いて笑って話してくれた奥さん。
 奥さんの言葉は私に「満足のいく看取りを支えた」達成感を与え、励まし癒してくれた。そして、TさんやYさんの看護に後悔を残した私に、再び前進する力を与えてくれた。
 宮崎和加子さんは「訪問看護師も看取りに当たっては大きなストレスを感じている。遺族が癒されるだけでなく訪問看護師も癒される必要がある」と述べている。
 遺族へのグリーフケアをおこなうことで得られるフィードバックは、時に辛い現実を突きつけるが、一方で看護師自身をも癒す効果があることを教えてくれた症例だった。
(大泉訪問看護ステーション・2013年8月号掲載)