東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

最期支えた四葉のクローバの色紙

 A氏が在宅調整で当院に入院されたとき、すでに膵臓癌末期で治癒の見込みはなく、食事も摂れず、排液のためのチューブが頚部から挿入されている状態でした。頚部からは浸出液がもれて処置も多く、在宅調整も難航が予測されました。
 40代のA氏は遠方で勤務していましたが、膵臓癌が見つかったため、内縁の彼女とともに帰省したのです。結婚は家族の反対がありできない、という事情がありました。
 A氏の中には近づく最期への不安があったでしょうし、「最期は家に帰りたい」けれども「家に帰れば彼女との生活は望めない可能性が高い」という強い葛藤もありました。
 看護師は、A氏の思いを尊重しながらかかわり、悩んだ末にA氏が決めた「どうしても家に帰りたい」という気持ちを汲んで、調整を行っていきました。
 退院が決まり、いよいよ明日がその日となったとき、不安や葛藤を抱えながら帰宅するA氏と、これまでA氏を支えてきた彼女を「とにかく励ましたい!」という思いで、色紙にメッセージを書いて贈ることを発案しました。
 残された日々の幸せを願い、四葉のクローバーの形の色紙に「退院おめでとうございます」「自宅での時を満喫してください」などなど、思い残すことなく生活してもらいたいと、スタッフ皆で思い思いの言葉を記しました。
 退院当日、A氏はその思いがけないプレゼントをとても喜ばれ、色紙を手に帰宅されました。
 自宅に帰って数日後に状態が悪化。当院がベッド満床のため受け入れができず他院へ搬送され、そこで逝去されました。
 退院後のA氏がその色紙を常に大事に傍らに置いていたこと、他院への搬送時にも色紙を持参してベッドサイドに飾り、最期の時も色紙を胸に抱いたまま逝かれたことを、後日、家族から伺いました。
 四葉のクローバーの色紙に乗せた皆の思いが、A氏の最期の時を支え、看取りがかなわなかった自分たちの心も支えてくれたように感じます。
(柳原病院・2017年12月号掲載)