東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

本人の意思を在宅スタッフと共有

 本蓮沼診療所は、月に約140人前後の患者の往診を行っている往診主体の診療所です。患者の年齢層は22歳から101歳と幅広く、脳血管障害、糖尿病、ALS、骨折後、認知症、癌末期と様ざまな疾患の方がいます。その中で、最期まで本人の意思を尊重し、在宅でお看取りすることができたケースを紹介します。
 A氏、60歳男性、独居。身寄りがいなく生活保護を受給。2年前に大学病院で中咽頭癌と診断。根治は困難であり、化学療法実施も効果がなく治療は中止。緩和ケアに移行と共に往診が介入になりました。往診開始当初はバイクで外出もでき、鎮痛剤内服で疼痛訴えもありませんでした。本人の希望は、可能な限り在宅で過ごすこと。病状の理解もできていたため、治療方針は本人の意思を確認しながら決めていきました。
 咽頭の腫瘍の増大に伴い、固形物の摂取が困難となり、胃瘻を造設。また息苦しさも出現し、「息苦しくなって死ぬのは辛い」と気切カニューレ挿入。その後は、胃瘻や気切カニューレ管理、吸引など問題なく自分で管理できていました。胃瘻では、栄養剤の他に煮物など自分で調理したものを注入し、自分なりに工夫もしていました。気切カニューレ挿入してからは、発声ができないため、連絡は訪問看護と携帯のショートメールで行うことにしました。
 往診開始4か月後からは毎週、状態を確認。疼痛が徐じょに増強し、麻薬の使用も開始しました。麻薬も胃瘻から自己注入のため、今後のことを考え入院を勧めましたが、本人は拒否。病状進行に伴い在宅管理も困難な状況でしたが、最期まで本人は在宅で過ごすことを希望。その本人の意思を在宅スタッフと共有し、往診介入から8か月後在宅でお看取りすることができました。
 癌末期・胃瘻・気切・麻薬管理、身寄りのいない独居と難しいケースでしたが、訪問看護やケアマネジャー、福祉など在宅スタッフと常に連携をとりながら、本人の希望通り最期まで在宅で過ごすことができました。
 住み慣れた環境でその人らしく過ごせるように支援すること、また、支える在宅スタッフが安心してケアを行えるように連携を取ることも、診療所の看護師として大切な役割だと思います。今後も患者に寄り添いながら日々奮闘していきたいと思います。
(本蓮沼診療所・2018年9月号掲載)