東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

患者と家族の思いを大切にして

 6月に初めて外来受診されたA氏は、70代男性 胃癌ステージIVリンパ節転移腹膜播種。5月に病院でバイパス手術のみ行われていました。食事はほとんど食べられず、水分のみ少しずつ飲めているという状況でした。
 病院に定期受診しながらも家が近いことから、診療所での点滴注射を希望され通院が始まりました。処方された栄養剤もあまり飲めず、ほぼ毎日点滴注射を行いました。
 時には自分の経営している会社へ出向いて行かる事もあり、奥さんからは「近くの診療所の先生に診ていただけるのは安心です」との言葉もいただきました。また、仕事の整理をしたいというA氏の思いを聞き、看護師も仕事の時間と点滴注射の時間を調整するなど工夫しました。他院で民間療法も受けていました。徐々にふらつきが強くなり、立ち上がりにも介助を要するようになってきました。病院で抗癌剤治療が不可能なことが、IVHについても否定的な見解から病院通院が終了。7月中旬頃より診療所通院も困難になり、訪問診療に変更となりました。自宅で過ごしたいとの本人の希望を受け入れて、同時に訪問看護を導入し病状管理ケアにあたりました。奥さんには「大丈夫だから」と我慢強いA氏も8月末より痛みの緩和が必要になりました。
 介護保険の申請を希望しないという状況で、妻の顔にも疲労感が見え始めていましたが、「生きる望みを持ち続けている主人の気持ちを大事にしたい。診療所は困った時にすぐに駆けつけてもらえるのでありがたいです」と話し、日々寄り添っていました。9月中旬、妻が見守る中永眠されました。
 高額になる民間療法のことや、もっと介護保険申請を勧めるなど、精神的サポートが必要だったのではないか考えさせられました。患者の気持ちを受け止め、個々に応じた援助を選択して、訪問スタッフと連携し、関わっていきたいと思います。
(むさしの共立診療所・2018年10月号掲載)