東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

地域で生活を継続できるように

 地域を支える拠点病院として、代々木病院3階病棟は全49床地域包括ケア病棟となり2年目を迎えました。
 Aさん夫妻は息子さんとの3人暮らし。夫は視力障害がありAさんが家族の生活を支えていました。当院の友の会会員でもあり、夫婦で外来に長年通院され、地域での役割も担っていましたが、数年前より認知症と思われる行動が目立つようになり、外来や地域包括、友の会の方々が心配している家族でした。
 自宅の電気が止められたエピソードもあり、地域包括を中心に介入を試みていましたが、「他人が家に入ると旦那をとられる」との被害妄想が強く、サービスが入れない状況での入院でした。
 今回の入院を機に自宅へ入ることができ、劣悪な環境で生活をされていたことがわかりました。息子さんは知的能力が低い印象で、認知症の母に変わり生活を担うことはできていませんでした。
 入院時のAさんは体臭や爪の白癬がひどい状況で、入れ歯にはカビが生えていました。笑顔のすてきなAさんですが、認知症状がかなり進行し、入院生活継続も困難を呈していました。まずは「夫婦そろって在宅へ」を目標に、生活の場を整えるため、友の会が中心となり地域包括と連携し自宅の大掃除に入りました。
 私も2回目に患者サポートセンターの師長とともに参加。Aさん宅は原宿裏手の都内の一等地。外観は普通ですが、玄関を開けると異臭とゴミの山にネズミの糞だらけ。TVで特集されるようなゴミ屋敷でした。みんなで掃除を進めていくと、若い頃の写真やAさんが長年勤務されていた職場の写真や賞状。病院にいるだけでは知ることのできない家族を支えてきたAさんの歴史と、家族の実情に触れることができました。
 現在は治療を終えた夫が、サービスを調整し在宅で生活されています。また、財産管理なども弁護士を通し後見人制度へ繋げることができました。地域包括ケア病棟の役割はただ単に在宅へ帰すことではなく、誰もが安心して住み慣れた地域で生活を継続できるように応援していくことです。それには患者さんの生き方を知り、暮らしを知り、地域ともつながっていくことが求められていると思います。
 今回は共同組織とのつながりも重要であることも学びました。今後も地域拠点病院として地域看護の実践に取り組んでいきたいです。
(代々木病院・2018年11月号掲載)