東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

残されたAちゃんの笑顔引きだす看護

 Aちゃん12歳、喘息で定期外来通院中です。Aちゃんの母親について緩和ケア病棟より連絡を頂きました。母親は子宮頸がんで治療していましたが、転移のため治療が困難となり緩和ケアへ入院していました。
 そこで、病棟・外来看護師・Aちゃんに介入している心理士でカンファレンスを開きました。
 カンファレンスでは、母親がAちゃんの卒業式に着付けを目標にしていること、母子家庭のため子どもたちが母親の死後どのように暮らしていくか悩んでいるということを知りました。弟は里親にお願いする予定ですが、Aちゃんは未定でした。以前、母親が入院した時に施設に預けられ、気軽に連絡も取れなく苦痛だったため、施設は“嫌だ”と泣いている姿を見て、母親も施設に入れるのは抵抗があるようでした。しかし、「祖父も軽度の認知症があり、施設も視野に入れて考えたほうがよいのではないか」という意見があり、別の施設の見学を検討しました。外来では、定期通院しているため、母親が亡くなった後のAちゃんをサポートできるように病室訪問を何回か行い、関係性を築けるようにしていきました。Aちゃんは内気で人見知りもあり、直接お話しすることが出来ない状況でした。受診時にはできる限り診察について話す機会を増やしていくことで、少しずつ笑顔が増えてきました。
 母親は卒業式の数日後に亡くなりました。母親の一番の目標である着付けは達成できました。
 院内多職種共同カンファレンスで、Aちゃんは亡くなる少し前から病室で付き添い、一緒に寝ていたこと、亡くなった後も一緒にミスト浴に入り、お化粧などの身支度も一緒に行ったことが分かりました。
 亡くなった1か月後の受診で、「お母さんとはずっと一緒にいたから最期も一緒にいれた」と表情穏やかに話し、今は祖父と生活し、学校も楽しいと笑顔で話してくれました。
 この事例を通して、患者さんの家族背景なども把握し、サポートすることの大切さを学びました。今後も患者さん・家族との時間を大切にしていきたいと思います。
(東葛病院・2019年8月号掲載)