東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

本人・家族の思いに寄り添う

 東都協議会グループでは、1年前から「柳原・千住地域医療・介護相談センター」を開設し、平日の午前・午後、開設する事業所を巡回しながら各専門職が交代で相談窓口に出ています。
 10月の某日、健愛クリニックで開設していた相談窓口に座っていると、慌てた様子で「柳原病院ですか?」と声をかけてきた80代のAさん(女性)がいました。「ここではないですよ…」と柳原病院の場所を案内しようとしましたが「どうかされましたか、よかったら話を聞かせてください」と話しかけると、1週間前、夫のことを相談したが、まだ返事が来ないので、直接柳原病院に話を聞きに行くとのことでした。
 以前の相談記録を確認しながら、再度どのような内容だったか確認をしました。もともと認知症があり、デイサービスなどを利用し生活していた夫が脳梗塞で他の病院で治療をしているが、食事も食べられないのでチューブで薬、食事を受けている。このまま入院していると入院費がかさみ生活ができなくなるので、柳原病院に転院させたいとのことでした。
 急きょ柳原病院のMSWと検討しましたが、病院での受け入れは難しいとの答えでした。脳梗塞でどうしてそこまで衰弱しているのか?その後入院中の病院からの情報提供書の内容を確認、以前からの胆嚢癌が悪化し、ターミナル状況になっている事が分かりました。
 Aさんがよければ「看取り」を視野に入れ、老健に入所させようと決意しました。しかし、老健では経鼻栄養の状況では受けられません。早急にご本人を訪問し「いける!」(嚥下)と判断し、いろいろリスクはありますがAさんの思い、希望を十分に聞き取り、入所を決定しました。
 入所後、水分ゼリーなど「美味しい」と食べて頂きながら2日後、静かに息をひきとられました。
 Aさんは「病院では何の説明もなく、チューブを入れられ、物のように扱われる雰囲気が嫌だった。ここに来られて本当によかった、夫の希望もかなえられた」と感謝のお言葉を頂きました。
 今後も、いろいろなご家族・経済・健康状況の方が老健には入所されますが、多種多様な知識、倫理観をもってご本人やご家族と対話していきたいと思います。
(千寿の里・2019年12月号掲載)