東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

「二つの力」を学び成長させたい

 緩和ケア病棟は、最後の場所と考えて入院され、「もうだめだ、こんなになってつらい…」と嘆いている方と出会うことが多くあります。体の調子の悪さは、とても不快でつらいことと思います。症状のコントロールができるように、医師をはじめ周囲のスタッフと協力して最善を尽くすようにしていますが、それぞれの感じかたや考えがありますし、その人の生きてきた価値観による思いや感じかたも反映しているようです。
 一人の方は自身のできなくなったことを常に悔やみ、自己肯定感がどんどん低下していく。もう一人の方は、できないことは手放して、周囲の人にゆだね、気持ちの平穏を保つ方法を考える。私はその違いはどこにあるのかと考えます。
 そんな時、ある会報誌で、「物事に折り合いを付ける力」と「幸せを感じる力」という言葉を見つけ、一人ひとりの中でそのことが、どの程度育てられているのかに影響を受けているように感じました。
 物事に折り合いを付ける力は、生活の中での困りごとやつらいことを解決していける力です。時には自身の心の中で我慢することもあれば、努力や学習をして乗り越えることができる強さだと思います。
 幸せを感じる力は、生きていくなかでの気分、心の持ちようだと思います。喜びのような強い感情ではなく、ほのかに温かくなれる身近な日常の中の、ちょっとしたことを発見できる力。例えば夕焼け空や月あかりの美しさなどで、やさしい気持ちになれることだと思います。
 私の年齢が入院している患者さんと近くなり、自分を重ねてみてしまうことがあるなかで、二つの力を私自身も、日びのケアを通して学び成長させていきたいと感じています。また、「一人ひとりが大切にされ、尊重されてケアを受けられるようにできたら本当にいいのに」と思いながら、現実とのギャップに悩んでいます。
 私も含めて、すべての人が個人として尊重される社会を生きていけるように、成熟していく努力が大切だと感じます。
 (王子生協病院・2021年1月号掲載)