東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

「本人にとっての最善」を考える

 未だコロナ感染症の予断を許さない状況が続いています。それに伴い病院でも面会制限がなされ、家族は患者さんがどのように過ごしているのか不安に思っているのではないでしょうか。
 Aさんは脳出血後、左麻痺があり寝たきり状態。施設入所しており、経管栄養を行なっている方でした。施設でコロナ感染症予防による面会制限が行われるまで、ご家族は毎日面会に行かれていたそうです。そんなAさんが誤嚥性肺炎で入院されました。抗生剤治療後に経管栄養を再開しましたが、痰の増加や栄養剤の逆流、胃瘻周囲からの浸み出しがあり、栄養が十分に摂れない状況になってしまいました。お看取り方向となり、地域包括ケア病棟に転科となりました。
 転科前の病状説明でご家族は「次に会う時は亡くなりそうな時ってことなんですね」と泣いていたそうです。転科時は、点滴のルートや膀胱留置カテーテルが挿入されていました。また、胃瘻からは白湯を入れ時間で開放しと、24時間チューブが繋がったままの状態でした。
 お看取りの状況として、たくさんのルートにつながれていることは決して安楽な状態ではありません。よくよくカルテを振り返ってみると、胃瘻交換の時期が過ぎていることが分かりました。主治医へ報告し、消化器内科の医師により、胃瘻交換が実施されました。すると、トラブルなく経管栄養を入れられるようになりました。栄養剤を半固形に変更することで、痰の量も減り、無事に施設へ戻ることが決定。退院前には全てのルート類を外すことができ、迎えに来たご家族に入院前と同じ姿を見せることができました。
 一言に『お看取り状態』といっても様ざまな状況があると考えられます。意思疎通のできない方が何を希望するのか判断するのは難しいことです。しかし、背景を考慮しつつ、本人の状況を自分の目で看て、チームスタッフや他職種とも相談・情報を共有しあい、本人にとっての最善は何かを考えていきたいと思いました。
 (みさと健和病院・2021年4月号掲載)