東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

大切な「看護のなぜ?どうして?」

 70歳代女性。独居の方。乳癌、胃癌、肺癌のターミナル状態で介入に至ったケースを紹介します。
 糖尿病、高血圧にて10年以上前から定期通院されていました。10年ほど前にも画像検査にて異常所見を指摘されていましたが、本人の拒否が強く、精査には至っていませんでした。約10年の間に主治医が3回変わりましたが、どの主治医が精査を勧めても頑なに精査を拒否されていました。
 今回、定期的な一般検査にて重症貧血が指摘され、主治医から輸血が必要である旨を伝えると、治療も拒否の状況でした。
 「Aさんはなぜここまで拒否されるのだろう」という思いからご本人へ面談を申し出ました。面談の中で精査や治療を拒否する理由を初めて聴くことができました。また、「実はね…もうね、原因がわかってるのよ」と乳癌が皮膚転移した状態であることを打ち明けてくれました。このとき私の中には「なぜ看護介入をしてこなかったのだろう」と後悔ばかりの思いでした。
 Aさんはこの面談をきっかけに何か吹っ切れたように精査、治療を受け入れてくれるようになりました。しかし、遠方に住む娘さんには「病気のことは伝えたくない」という気持ちは変わりませんでした。
 その後、入院することになったため、外来での経過や本人の人柄、思いなどを入院前に病棟の緩和ケア認定看護師に情報提供し、入院後の関わり方について相談しました。そして、病棟との信頼関係が築けたのち、娘さんへの連絡も承諾されました。突然報告を受けた娘さんもAさんの状況を知り、思うことがたくさんあったとは思いますが、限られた時間を大切に考えて、熱心に介護に携わっておられます。
 今回のケースでは「看護のなぜ?どうして?」という視点の大切さや「医師任せにしない」「自ら行動を起こす」ことの大切さ、「連携」の大切さを学びました。そして、自ら前へ前へと行動することを認めてくれる民医連看護には感謝しかありません。
(小豆沢病院・2021年9月号掲載)