東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

自宅で最期を迎えたAさん

 Aさんは90歳代の女性で、次男と2人暮らしで一緒に外来通院されていました。認知症の進行によりコミュニケーションも困難でした。痛みに敏感で血圧測定でも痛みを訴え、怒り出してしまい測定が難しいこともありました。
 2021年8月に発熱で受診し、COVID―19の診断、その後次男も陽性となりました。母の心配をする次男から毎日電話が入り、話を聞きました。次男の希望で看護師が訪問して状態観察も行いました。その際、SpO2低下を認めたため往診も入り在宅酸素を導入しました。食事は殆ど摂れず、認知症のため点滴も困難で、このままだと脱水が進んでしまう状況でした。
 発症9日目、保健所から入院連絡が入りましたが、受入医療機関へ重度の認知症があることを伝えると断られてしまいました。別居の長男は在宅看取り希望、長女は入院希望で次男は決められない状態でした。次男もCOVID―19で味覚障害や倦怠感などの症状がある中、寝る時間を惜しんで介護をしており、心身ともに疲労状態でした。
 往診医と相談し、このままでは悲惨な状況になってしまうと長男を説得し、入院を了承されました。次男もこのまま自宅で看たい思いと、自分が状態悪化した時には介護ができなくなってしまうという葛藤の中、入院を了承されました。保健所が認知症の対応が可能な病院をあたり入院することができました。
 8月下旬に退院となりましたが、入院中も経口摂取がほとんど進まず点滴加療を行っていました。自宅に帰ってきてからも経口摂取は進まず、次男が介助で好きな食べ物を食べさせていましたが、数口の摂取量でした。毎週往診し、少しでも良くなるのではないか、と希望を持つ次男の話を傾聴しました。
 Aさんは発語も全くなく、ほとんど閉眼している状態でしたが、次男が懸命に介護し続けてきました。11月末、自宅で永眠されました。最期は眠るような表情だったとのことでした。コロナ禍で大変な中、自宅で最期を迎えることができて良かったと思う事例でした。
(うのき診療所・2022年3月号掲載)