東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

欠かせない精神面の支え

 コロナ第5波での事例。A氏70代女性、ADL自立、認知症なし、コロナ陽性で当院入院。3日目、酸素化改善なくネーザルハイフローを導入。点滴治療を進める中、酸素化は増悪の一途を辿る。10日目には酸素最大量60L/分で酸素飽和度50~80%台、しかし自覚症状に乏しいハッピーハイポキシアだったため、トイレ移乗も飲水も会話もできる状態だった。
 意識がはっきりしている間に家族との遠隔コミュニケーションを提案し、その日の夕方、看護師2人がベッドサイドで待機、A氏の携帯でライン(コミュニケーション用携帯アプリ)を起動すると、孫がグループラインを作っており、もう一人の孫も時間を合わせて参加。
 孫2人・ひ孫2人・A氏の5人で画面共有し、それぞれの顔を見ながら約10分、会話を楽しんだ。途中やや呼吸促拍となったが、A氏にも家族にも笑顔がみられた。就寝前、「孫に会えたから興奮しちゃってるのか、眠れそうにない」と話す様子あり。次の日には「また孫と話したい時はお願いします」と看護師に話した。その翌朝、入院12日目A氏は永眠された。
 ネーザルハイフロー管理とハッピーハイポキシアにより、食事摂取やトイレ排泄ができ、テレビ鑑賞、携帯操作、看護師との会話などQOLは維持できた。しかし精神面では、家族との面会は禁止され、孤独感があったと想像できる。その中でA氏とその家族が顔を合わせて会話ができたことの意義は大きい。
 ビデオ通話後の発言から、孫やひ孫と顔を合わせられた嬉しさや未来に向けた明るい気持ちがうかがえた。孫もまた、もう一人の孫に声を掛け、ひ孫を抱いて祖母との会話を楽しみにしていた。家族間の繋がりを改めて確認できた時間だった。
 つらい治療を乗り越え、安心して入院生活を送ってもらうためには、精神面での支えが欠かせない。これからも、心の支えとなる家族との関わり、看護師が背中をさする手のぬくもりで得られる安心感など、寄り添う看護を大事にしていきたい。
(柳原病院・2022年4月号掲載)