東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

多職種連携と地域で支え看取る

 千石にじの家は、文京区で唯一の看護小規模多機能(以下、看多機とする)として開設から6年が経過しました。
 90代のA氏(男性・独居)は、千石にじの家が開設して間もない2016年3月から利用開始となりました。妻に先立たれて以降、喫煙とバランスの悪い食生活や薬の飲み忘れから、心不全や誤嚥性肺炎で何度も入院を繰り返していました。
 しかし、看多機を利用されてから体調は安定し、入院する頻度も少なくなり、大好きなラジオやジャズを聴きながら自宅で過ごせるようになりました。看護師の健康管理と介護職員の生活支援、往診の診療所や薬局との連携により、きめ細やかな対応ができたことによる成果だったといえます。また、地域に住む友人や、古くから付き合いのある隣人の支援も効果が大きかったと思われます。
 しかし、年を重ねるごとにADLの低下は著しくなり、何度もカンファレンスを行い、最期をどこで迎えたいかと本人を交えケアマネや友人、医師や看護師など関係者と何度となく意思確認することがありました。A氏は毎回、「施設や病院は嫌なんです。自宅が一番です。死ぬまで煙草は吸いたい。最期は家で迎えさせてください」と強い意志表示をしていました。
 歩行困難、全身状態の悪化により昨年の12月からは、通い(看多機のデイサービス)に来ることができなくなり、毎日の訪問介護、訪問看護でベッド上の生活となったA氏の支援を行いました。
 A氏は、「いつも本当にありがとうございます。にじの家の方は皆さん顔見知りなので安心してお願いできます」と訪問する職員に対して、いつも感謝の気持ちを伝えてくれました。
 看多機の特徴でもある、顔なじみの職員が通い・訪問・泊りの全てのサービスに対応することで、A氏は通いに参加できなくなっても安心されていたと思います。
 年が明けて1月3日の朝、介護職員が訪問するとA氏は静かに息を引き取っていました。
 医師、看護師、介護職員とともに長い間支援を続けてくれた隣人の方も来てくれて、皆で最期のお別れをしました。
 最期までA氏の意思を尊重し、多職種連携と地域で支え、自宅で尊厳のある看取りをさせていただいた経験に感謝をこめて天国に送りたいと思います。
(千石にじの家・2022年5月号掲載)