東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

「生きる」を支える援助がしたい

 A氏(70代後半女性)は、ALSと診断され、治療開始後、日常の健康管理目的で専門病院からの依頼で訪問診療開始となりました。80代後半の夫と2人暮らし、主介護者は夫です。長女家族が隣に住んでいます。夫は、A氏がALSと診断されるまで都内老舗果実店を営んでいました。
 A氏は、専業主婦として茶道や華道を嗜み、ゆとりある暮らしの中で子育てをし、家庭を守ってきました。ALSと診断を受けた際も病気の理解はしていたものの、ALSの進行は、A氏の描いていた老後の希望と現実を大きく引き離しました。
 現在、気管切開からの人工呼吸器、持続吸引、胃瘻、尿管が留置され、コミュニケーションは極僅かに口角、視線、瞬き、指先が動くのみで、とても時間を要し、体力を消耗させ、介護者の先読みが精神的なストレスを助長していました。
 A氏が「死にたい、スイスに連れて行ってほしい。もう何も(経管栄養)しないで欲しい。ケアをしなくて良い」などの訴えが重なりました。
 家族も、関わる医療・介護者も、支えになりたいと思っていても、それに応えることができず、悩み苦しみ、無力感に苛まれ訪問の際は気持ちが重くなりました。
 長女様ご夫婦とA氏に関わる多職種とで、A氏と家族の苦しみ、穏やかになれる支えは何か、その支えを強めるためにどう援助できるかを話し合いました。
 それぞれの職種ができる援助を言葉にできた時、皆で応援でき実践することにつながりました。しかし、今もなおA氏の苦しみは繰り返されています。
 訪問診療の中でゆっくりと時間をかけることは難しいかもしれません。これから先も、多職種と連携し、A氏が、生きてきた人生の中で何を大切にしてきたのかを丁寧にとらえることができ、A氏自身が苦しみを通して大事な支えに気がついた時、「私はただの私だけで尊い存在」と思えたなら、希望の光を見出して生きていけるでしょう。
 これから先も「生きる」を支える援助をA氏との関わりを通して学ばせていただきたいと思います。
(健生会ふれあい相互病院・2022年6月号掲載)