東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

新型コロナ感染症の在宅看取り

 世界的に新型コロナウイルス感染症が発生し、2022年7月時点では全国で自宅療養している感染者は約61万5600人となりました。代々木訪問看護ステーションは新宿区にあり、全国的に感染者の多い地域となっています。
 東京都ではフォローアップセンターが2021年12月に設立。当ステーションも新宿区保健所からの依頼を受け自宅療養者の健康観察を行ってきました。新型コロナ感染症で入院すると、ご家族との面会や最後のお別れもできないまま病院で亡くなられる方が多くなっています。
 そんな中、新型コロナ罹患後に自宅で看取った事例がありました。
 A氏80代女性。認知症あり。意思の疎通は困難。息子と二人暮らしであった。A氏がコロナ陽性となり、ここ数か月で徐々に老衰が進んでおり、リスクがある状態のため入院の選択もあると伝えたが、息子は「父親の時に最期を看取ることができなかった。母親は自宅で最期まで一緒に過ごしたい」と自宅での看取りを決意しました。
 その後、毎日訪問していたヘルパーは中止、週5日のデイサービスもお休み。毎日のオムツ交換、食事の準備、家事、内服等すべて息子が行うこととなりました。元々介護の一部を担っていたため一人で介護することに抵抗はなかったようですが、看護師は感染対策しながらの短時間訪問の継続や電話での病状観察を毎日続け、一人で介護することとなった息子が孤独や不安を感じないよう指導や助言をしながら関わりを続け、数日後A氏は自宅で息を引き取りました。
 その後のグリーフケアでA氏の息子から、“不安はなかった”“達成感があった”などの言葉が聞かれました。しかし、様々なことが制限され、訪問も短時間、グリーフケアも電話でのやりとりとなりました。ゆっくりと家族の話を聞きながら、気持ちに寄り添うケアが十分できませんでした。
 今回このような事例を初めて経験し、もっと私たちにできることはなかったのかと考え、利用者がどんな状況においても安心して当たり前に医療、継続した看護が受けられるよう、これからも支えていきたいです。
 (代々木訪問看護ステーション・2022年11月号掲載)