東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

コロナ病棟でもその人らしく元々の生活に近づける工夫


 現在、新型コロナ感染症の入院患者は高齢者が大半を占める。第6波以降、重症化率は低下するも、高齢者や基礎疾患を持つ患者は、感染を契機に吸引や補液などの医療処置が必要となったり、ADL低下や認知機能悪化により隔離解除後も退院できないケースが多い。
 A氏60代男性はデイサービスのクラスターで感染。アルツハイマー型認知症(HDS―R9点)、元々屋内自立し常食摂取。自宅退院の条件は歩行ができること。
 入院2日目より、誤嚥性肺炎併発し、酸素・抗生剤投与開始し適宜吸引を実施。解熱後、食事を再開したが、著明な嚥下機能低下はなかったものの摂取量は伸びず、栄養士と食形態を相談し、補助食品の他、アイス・コーラ・ゼリー・のりの佃煮等本人の嗜好を取り入れ、少量ずつ摂取が増えていった。入院時寝たきりであったが、リハビリスタッフと協力し、離床と歩行訓練を実施し、ふらつきはあるが歩行可能なレベルとなった。
 また入院時から易怒性・暴力行為があり、ケア介入が困難であった。妻からのカーペンターズや平原綾香が好きとの情報をカンファレンスで共有しCDを持ってきてもらい、流したところ落ち着くことも多くあった。
 トイレ誘導をすすめていくことで、失禁はあったが、徐々にオムツいじりの回数は減り病衣で対応可能となった。薬剤調整や日中の離床促し(CDを聞く・歩く・折り紙)・夕方の足浴等を行い、昼夜のリズムをつけることで精神的に穏やかとなり、抑制も安全ベルト以外ははずすことができた。
 この事例を通し、隔離という非日常の環境であっても、元々の生活と退院の目標を意識しながら、多職種を含めカンファレンスを繰り返し、個別性の高い看護介入を行うことで、高齢者の病状悪化やADL低下の予防ができるのだと感じた。
 コロナの収束は見えないが、隔離環境下でも感染対策を徹底しながら、日常に近い看護ができるようにスタッフで意見を出し合いながらよりよい看護ケアを模索していきたい。
(立川相互病院・2023年2月号掲載)