東京民医連

輝け看護!

みんいれんTOKYO(機関紙)の「輝け看護!」コーナーから

患者さんの笑顔を守るために

 私たちが取り組んでいるのは、身体抑制を必要としない環境作りです。
 今回、80歳代の認知症の患者さんの抑制を解除できた事例を紹介します。肺炎から肺膿瘍、敗血症性ショックとなり廃用症候群のリハビリ目的で当院へ転院されました。嚥下機能検査で経口摂取は厳しく、経鼻チューブが外せない状態でした。前医でも経鼻チューブの自己抜去を繰り返しており、抑制は解除せず、両手ミトン、上肢抑制をされたままでした。
 「家に帰りたい」「水を飲ませてほしい」「チューブが邪魔だ」「これ(ミトン)を外してくれ」など訴えが多く、入院中に何度も自己抜去を繰り返していました。秒分ごとのナースコールで抑制の不満を訴え、抑制カンファレンスで「抑制することで患者さんの不満やストレスを助長させているのではないか」という意見がありました。そこで「抑制を解除する」ことを試みました。
 経管栄養中に自己抜去をするリスクがあり、抑制解除は不安でした。そのため、スタッフが揃っている日勤帯に両手ミトンを外して、ナースステーションで過ごしていただきました。
 患者さんと会話する時間を作り、好きな音楽や小説、パズルなどを集中して楽しめる環境作りを実践していきました。すると数分から数時間、抑制なしで過ごせる時間が増え、自己抜去する回数が減っていきました。だんだんと患者さんの笑顔が多く見られるようになりました。
 これからも患者さんの笑顔を守るために「不必要な抑制を無くす」「安易に抑制はしない」「その人らしく過ごせる環境作り」「人権を尊重する看護」をチームで足並み揃えて目指していきます。
(代々木病院・2025年7月号掲載)