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Big Event in TOKYO 2003 Spring!
辺見庸氏 特別講演
「9.11−アフガン−イラク−暴走する最強国アメリカ
−そして私たちは」

台風の影響から大雨の降った5/31(土)、全日本民医連・関東甲信越地方協議会主催『新入医学生歓迎 春のビッグイベント』が行われました。参加者は医学生約40名、全体で100名以上の参加となりました。

辺見庸氏 第1部は、作家でもありジャーナリストでもある辺見庸さんを迎え、『9.11-アフガン-イラク-暴走する最強国アメリカ-そして私たちは』というテーマで特別講演が行われました。

辺見さんはまず始めに、第二次大戦中に日本軍が中国大陸で行った生体実験(731部隊など)の事実を話しました。「この非人道的実験に関わった者は数千名にのぼるが、証言をした者はごく一部しかいない。彼らは恥じたり恐れたりしたわけではなく、罪の意識が全くなかったために忘れていたのだ(無意識の非人間性)。人間にとって加害の記憶というのは忘れやすいものなのだ。」と語りました。

また、"過去の過ち(戦争責任)に学ばない"日本の現代について語り、「5/15有事法案が衆議院で可決され、日本は戦争に積極的参加をする国になろうとしている。にも関わらず、可決されたまさにその時、テレビでは白装束集団とタマちゃんの報道が垂れ流され続けていた。メディアで見たものが真実ではなく、目に見えないものを見る目が今ほんとうに求められている。」と言葉は次第に力強くなります。

そして最後に9.11テロ以降のアフガン、イラクへの侵略戦争について声を荒げます。「今回のイラク戦争で、アメリカはイラクに対し42日間にわたり、のべ11万回の空爆を加え、10万人以上のイラクの人々が直接に殺害された。世界中で1千万人の人々が反戦デモを行っていたにも関わらず…。そして今後は北朝鮮にも侵略が行われるだろう。あなた方はクラスター爆弾が、朝鮮のハルモニ達に落とされることに耐えられるか?私達は人間が殺されることをもっとリアルに想像しなければいけない…結局のところ戦争は"残酷の正当化"でしかない。皆さんの多くは将来医師となるわけだが、"高度に知能化された野蛮人"(イラク攻撃を指揮したノーマン・シュワルツコフ米軍司令官はIQ170であったことを指して)になることなく、常に"何が大事なのか"を見誤ることなく生きてほしい。」と締めくくりました。

参加者からは多くの質問が寄せられました。『北朝鮮に対する不安から有事法制が必要だという人もいるが、そのことをどう考えていますか?』に対しては「一体何が不安なのか?日本の軍事評論家で北朝鮮が日本に攻めてくるなどと信じているものは誰もいない。不審船に乗って攻めてくるとでも思っていますか?北朝鮮にも普通に生活している人々がいることを想像して欲しい」と応えました。また、『辺見さんは信念を持って自分の意見を言っているが、時として怖くなったりしないのか?』に対して、「このような社会を作ってきた世代の責任として私は発言を続けている。何よりも怖いのは自分が黙ってしまうことだ」と応えました。

交流会第2部はテーマ別交流会が行われました。テーマは『医療と平和−有事法制』と『被曝者医療』の二つで行われ、『医療と平和』では小池晃参議院議員が、『被曝者医療』では反核医師の会の向山医師が講演を行い、講演後は小グループに分かれてディスカッションが行われました。第1部をうけて、平和や社会に対する問題意識が高まった参加者1人1人が自らの思いを言葉にし、「自分に出来ることは何か」「周りの人たちにも伝えていきたい」などの発言が飛び交いました。

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辺見庸氏プロフィール
作家。1944年、宮城県石巻市生まれ。早稲田大学文学部卒。1970年、共同通信社入社。北京特派員(2回、計6年)、ハノイ支局長、米国研修留学、外信部次長、編集委員などを経て、96年末退社。

 78年、中国報道で日本新聞協会賞を、91年、『自動起床装置』(文藝春秋刊、文春文庫)で第105回芥川賞をそれぞれ受賞した。94年には、世界30カ国を足かけ3年にわたりルポした『もの食う人びと』(共同通信社刊、角川文庫)を発表、90万部を超す大ベストセラーとなり、第16回講談社ノンフィクション賞、JTB紀行文学大賞などを受賞した。

 他の著書に、『ハノイ挽歌』、『赤い橋の下のぬるい水』(以上、文春文庫)、『反逆する風景』(講談社文庫)、『不安の世紀から』、『ゆで卵』、『屈せざる者たち』、『新・屈せざる者たち』(以上、角川文庫)、『眼の探索』(朝日新聞社刊、角川文庫)、吉本隆明氏との対談をまとめた『夜と女と毛沢東』(文藝春秋刊、文春文庫)、『独航記』(角川書店刊)、高橋哲哉氏との対談『私たちはどのような時代に生きているのか』(同)、『新・私たちはどのような時代に生きているのか』(岩波書店)、『単独発言――99年の反動からアフガン報復戦争まで』(角川書店)、坂本龍一氏との対談『反定義――新たな想像力へ』(朝日新聞社)など多数。最新刊『永遠の不服従のために』(毎日新聞社)が7刷りとなり話題になっている。
辺見庸氏
右の著作の他、NHK教育テレビ『ETV特集』やTBS『筑紫哲也ニュース23』などに連続出演し、メディア論、文明論を通じて時代への異議申し立てを続けている。現在、『サンデー毎日』誌上でエッセイ「反時代のパンセ」を連載中。なお、2001年12月には、タリバン政権崩壊後のアフガニスタンを現地取材し、2002年3月には米国を訪れノーム・チョムスキー博士らにインタビューした。2003年4月から早稲田大学客員教授として母校の教壇に立っている。


   


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